胃神経症いしんけいしょう
胃神経症は、胃カメラなどの検査で異常が見つからないにもかかわらず、胃もたれやみぞおちの痛み、食欲不振などの症状が続く状態を指します。ストレスや自律神経の乱れが深く関係しており、機能性ディスペプシアの一種とされています。治療には薬物療法に加えて、生活習慣や心理的な側面への対応も重要です。
36.jpg)
胃神経症とは?
胃神経症とは、胃の構造や粘膜に明らかな異常が認められないにもかかわらず、慢性的な胃の不快感や痛み、もたれ、食欲不振などの症状が続く状態を指します。
以前は「神経性胃炎」「心因性胃炎」などとも呼ばれていましたが、現在では「機能性ディスペプシア(Functional Dyspepsia:FD)」という名称が広く使われており、その一部として位置づけられています。
胃神経症の特徴は、内視鏡検査や血液検査では特に異常が見つからないことです。それにもかかわらず、本人にとっては非常に強い不快感があり、生活の質(QOL)に大きな影響を与えることがあります。
背景には、胃の運動異常、胃の知覚過敏、ストレス、自律神経の乱れなどが関与しており、心身両面からのアプローチが求められます。
原因
胃神経症の原因は多因子性であり、以下のような要素が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
- ストレスや精神的緊張:慢性的なストレスにより自律神経が乱れ、胃の働き(蠕動運動や胃酸分泌など)に影響を与えます。
- 胃の知覚過敏:通常であれば不快と感じない程度の胃の刺激に対して、過剰に反応して痛みやもたれを感じる状態です。
- 胃の運動異常:食後に胃がうまく拡張しなかったり、食物の排出が遅れたりすることで症状が生じます。
- 体質:やせ型の人や、もともと胃腸が敏感な人に多くみられる傾向があります。
- 生活習慣:不規則な食事、過労、睡眠不足、喫煙、アルコール、カフェインの過剰摂取も発症に関与します。
これらの要因が積み重なり、胃の機能に影響を及ぼすことで、胃神経症が発症・慢性化することになります。
症状
胃神経症で見られる症状は多様で、主に上腹部(みぞおち)の不快感や痛みが中心です。症状の出かたは人によって異なり、以下のような訴えが多くみられます。
- 胃もたれ
- 食後の膨満感
- みぞおちの重苦しい感じや刺すような痛み
- 食欲不振
- げっぷや吐き気
- 早期飽満感(少し食べただけで満腹になる)
- ストレスを感じると症状が悪化する
また、胃の不快症状だけでなく、肩こり、頭痛、全身倦怠感、不眠、便通異常(便秘や下痢)などを伴うこともあります。
これらの症状は時間帯や食事、気候、精神状態などによって変化し、一定のパターンがないのが特徴です。胃の不快感が長期間続く一方で、検査では異常がないことから、患者は「原因不明の体調不良」に悩まされることになります。
診断方法と治療方法
診断
診断の第一歩は、他の器質的な疾患(胃潰瘍、胃がん、胃炎など)を除外することです。そのため、上部消化管内視鏡(胃カメラ)検査を行い、胃粘膜の異常がないことを確認します。
また、血液検査、ピロリ菌の検査、腹部超音波などが補助的に行われます。こうした検査で異常が認められず、なおかつ症状が長期間続いている場合に「機能性ディスペプシア(胃神経症)」と診断されます。
治療
治療は、薬物療法と生活習慣の見直しが中心となります。
- 胃の運動を整える薬(消化管運動機能改善薬)
- 胃酸の分泌を抑える薬(PPI、H2ブロッカー)
- 漢方薬(六君子湯、半夏瀉心湯など)
- 抗不安薬、抗うつ薬(症状が強く、ストレス要因が強い場合)
また、ストレス軽減、睡眠の確保、規則正しい食事、適度な運動などの生活指導が極めて重要です。症状が慢性化する場合は、心療内科との連携も検討されます。
予後
胃神経症は命に関わる病気ではありませんが、慢性的に続くことで患者の生活の質を著しく低下させる可能性があります。早期に適切な対応がなされれば、多くの場合、症状のコントロールは可能です。
ただし、ストレスや生活習慣の乱れが続くと、症状がぶり返す傾向があります。再発を繰り返すタイプもあり、長期間にわたって症状と付き合っていくケースもあります。
また、胃神経症が原因で食欲不振や体重減少が続くと、栄養状態の悪化を招き、全身の体調にも影響を及ぼすことがあります。
薬物療法が効きにくい場合には、認知行動療法や心理カウンセリングなど、精神面へのアプローチが予後改善につながることがあります。
生活全体を見直し、医師との信頼関係を築きながら、ゆっくりと症状と向き合うことが長期的な安定につながります。
予防
胃神経症を予防するには、胃の機能と自律神経のバランスを保つことが重要です。日常生活における以下のような習慣が予防につながります。
- ストレスをため込まない(適度な運動、趣味、休息)
- 睡眠を十分にとる
- 規則正しい食生活(朝食を抜かない、腹八分目、よく噛む)
- 冷たい物や刺激物(香辛料、カフェイン、炭酸飲料など)の過剰摂取を避ける
- 過労を避け、仕事や家事の負担を適切に調整する
- 飲酒や喫煙を控える
また、胃に不快な症状を感じたら放置せず、早めに医療機関を受診することが大切です。検査で異常がないと安心しすぎるのではなく、症状に合った治療を受けることで、慢性化を防ぐことができます。
予防には、心身のバランスを整える意識が欠かせません。
関連する病気や合併症
胃神経症は単独で発症することもありますが、以下のような機能性疾患や心理的な問題と併発することも多く見られます。
- 機能性ディスペプシア(FD):胃神経症の現代的な診断名
- 過敏性腸症候群(IBS):下腹部の不快感や便通異常を伴う疾患
- 自律神経失調症:全身の不調とともに胃の不快感が現れる
- うつ病や不安障害:精神的ストレスが胃症状を悪化させる
- 摂食障害:食への不安や過剰な制限が胃の機能に影響を与える
また、胃神経症の慢性化により、食欲低下、栄養不足、体重減少、集中力の低下、社会的孤立などが二次的に生じることもあります。
症状が一見軽微でも、背景に多くの問題が隠れている可能性があるため、身体面だけでなく心理面も含めた包括的な評価と対応が求められます。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
クラウドドクターの
オンライン診療
クラウドドクターのオンライン診療
クラウドドクターでは、問診内容を元に全国から適したドクターがマッチングされ、あなたの診療を行います。診療からお薬の処方までビデオ通話で受けられるため、お忙しい方にもおすすめです。
-
いつでも診療OK
24時間365日 -
ご利用可能
保険診療が -
お薬の受取り可能
お近くの薬局やご自宅で
■ 参考・出典
日本消化器病学会「機能性ディスペプシア診療ガイドライン」(https://www.jsge.or.jp/)
国立国際医療研究センター「胃神経症(機能性ディスペプシア)」(https://www.ncgm.go.jp/)
日本神経消化器病学会「心身症と胃腸症状」(https://www.j-nm.org/)
■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。
「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。
医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。
医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。
- 公開日:2025/07/08
- 更新日:2025/07/09
クラウドドクターは24時間365日対応
現在の待ち時間
約3分