胃癌いがん
胃がんは、胃の内側を覆う粘膜から発生する悪性腫瘍で、進行するまで自覚症状が出にくいことが特徴です。原因としてはピロリ菌感染、食生活、遺伝などが挙げられ、早期発見が予後を大きく左右します。内視鏡による検診と、病変の広がりに応じた治療(内視鏡切除・外科手術・化学療法)が重要です。
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胃がんとは?
胃がんは、胃の粘膜上皮細胞ががん化し、異常増殖を起こす悪性腫瘍です。胃のどの部位にも発生し得ますが、特に胃の出口側(幽門部)や胃体部に多く見られます。
日本では高齢者に多く、長年にわたって胃の炎症や萎縮が続いた結果として発症することが多くあります。胃がんは「早期がん」と「進行がん」に分けられ、早期がんでは胃の粘膜または粘膜下層にとどまる病変で、治療すれば予後は良好です。
一方、進行がんでは胃の筋層や漿膜を超えてがんが広がり、リンパ節や肝臓、腹膜などへの転移を伴うこともあります。組織学的には腺がんが多く、分化型(腺管構造が残るタイプ)と未分化型(構造が不明瞭なタイプ)に分かれます。
胃がんの進行は比較的ゆっくりで、早期発見・治療ができれば長期的な生存も可能です。
原因
胃がんの最大のリスク因子は「ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)」感染です。ピロリ菌が胃の粘膜に長期感染することで慢性胃炎、萎縮性胃炎、腸上皮化生と進行し、最終的に胃がんの発生につながるとされています。
他にも、次のような要因が発症に関与します。
- 高塩分食:漬物、干物などを多く摂取することで粘膜に慢性的な刺激を与えます。
- 喫煙:胃粘膜への血流を悪化させ、がんのリスクを高めます。
- 過度な飲酒:特にアセトアルデヒドの分解が苦手な体質の人でリスクが増大します。
- 加齢:年齢とともにリスクは上昇します。
- 家族歴:胃がん患者が近親者にいる場合、発症リスクが高い傾向があります。
ピロリ菌が除菌されないまま放置されると、これらの要因が複合してがんの土壌が形成されていきます。したがって、リスク因子を早期に取り除くことが発症予防に直結します。
症状
早期の胃がんは無症状のことが多く、健康診断や人間ドックの内視鏡検査で偶然見つかることも珍しくありません。
自覚症状が現れる場合、以下のような消化器症状が見られます。
- みぞおちの痛みや不快感
- 胃もたれ
- 食欲不振
- 早期飽満感(少し食べただけで満腹感を感じる)
- げっぷ
- 吐き気や軽い胃の痛み
進行すると、次のような症状が出現することがあります
- 黒色便(消化管出血による)
- 吐血
- 貧血による倦怠感、立ちくらみ
- 体重減少
- 嚥下困難(食道側への浸潤)
がんが胃の出口を塞ぐように成長すると、食物の通過障害による嘔吐や体重減少が顕著になります。
初期段階では症状があってもあいまいなことが多く、他の胃疾患と区別がつきにくいため、早期発見には定期的な内視鏡検査が重要です。
診断方法と治療方法
診断
診断の基本は「上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)」です。内視鏡により、がんの形状(隆起型・陥凹型など)を観察し、病変部から組織を採取(生検)して病理検査を行います。これにより確定診断がつきます。
病期(ステージ)の評価には、CT、超音波内視鏡(EUS)、腹部超音波、PET検査などを併用し、がんの深さ、リンパ節転移や遠隔転移の有無を調べます。
治療
治療法は進行度に応じて以下のように選択されます。
- 内視鏡治療(EMR・ESD):がんが粘膜内にとどまっている早期がんに対して行われます。
- 外科手術(胃部分切除・全摘):進行がんでは胃の一部または全体を切除し、リンパ節も同時に摘出します。
- 化学療法:再発予防や、手術が困難な症例に対して行われます。
- 放射線療法:まれに局所制御目的で用いられます。
手術後は消化機能や栄養状態への配慮が必要になり、食事内容の調整や栄養指導が併せて行われます。
予後
胃がんの予後は、がんの進行度(ステージ)と治療内容によって大きく左右されます。早期に発見され、内視鏡的または外科的に完全に切除された場合、5年生存率は90%以上と非常に高く、再発リスクも低く抑えられます。
しかし、進行がんの場合はリンパ節や他臓器への転移が起こりやすく、5年生存率はステージによって大きく低下します。特に腹膜播種や肝転移を伴う症例では、長期予後は厳しくなります。
術後には定期的な内視鏡検査、CT、血液検査(腫瘍マーカー:CEAやCA19-9など)によるフォローアップが必要です。再発が早期に見つかれば、追加治療により予後改善が期待できます。
最近では術後補助化学療法や分子標的薬、免疫療法などの進歩により、進行胃がんの生存期間の延長も見込めるようになってきています。早期発見と継続的な管理が、長期生存の鍵となります。
予防
胃がん予防の基本は「ピロリ菌感染の早期発見と除菌」です。除菌により、胃がんの発生率を大きく下げることが多くの研究で明らかになっています。
さらに、以下の生活習慣の見直しも予防に有効です。
- 高塩分食を避ける(漬物、干物などの摂取を減らす)
- 野菜・果物をバランスよく摂取する
- 禁煙(胃がん発症リスクを高めるため)
- 過度な飲酒を控える
- 定期的な内視鏡検査を受ける
胃がんの家族歴がある方や、萎縮性胃炎、腸上皮化生の所見がある方は特に注意が必要です。年1回の胃カメラによる検診を継続することが、早期発見と予後改善につながります。
また、ストレス管理や十分な睡眠、食事時間を規則正しくするなど、胃への負担を減らす生活全般の見直しも胃がんの予防に貢献します。
関連する病気や合併症
胃がんに関連する主な病態として、「萎縮性胃炎」「腸上皮化生」「ピロリ菌感染」が挙げられます。これらは胃がんの前段階として知られ、粘膜の長期変化の中で発症リスクが高まります。
また、胃がんが進行することで、次のような合併症が起こることがあります。
- 出血(黒色便、貧血、吐血)
- 幽門狭窄(胃の出口がふさがり、嘔吐や食物通過障害)
- 穿孔(胃壁に穴が開くことで腹膜炎)
- 腹膜播種(腹部全体へのがんの拡がり)
- 肝転移・肺転移
術後の合併症としては、ダンピング症候群、胆汁の逆流、栄養障害、ビタミン欠乏などがあります。手術や化学療法による体力低下、精神的な不安、食事制限による生活の質の低下も合併症の一部といえます。
胃がんの予防、早期発見、適切な治療と同時に、合併症の管理と生活支援が重要なテーマとなります。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
日本胃癌学会「胃がん診療ガイドライン」(https://www.jgca.jp/)
国立がん研究センター「胃がん」(https://ganjoho.jp/)
日本消化器病学会「胃がんの診療」(https://www.jsge.or.jp/)
■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。
「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。
医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。
医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。
- 公開日:2025/07/08
- 更新日:2025/07/09
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