発作性頻拍症ほっさせいひんぱくしょう
発作性頻拍症は、突然発症し、突然停止する不整脈で、心拍が速くなる発作を繰り返します。代表的なタイプには房室回帰性頻拍や房室結節回帰性頻拍があり、生活に支障をきたすことも。治療には薬物療法やカテーテルアブレーションが行われます。
発作性頻拍症とは?
発作性頻拍症とは、心拍数が突発的に異常に速くなり(通常1分間に150〜250回)、数秒から数時間持続したのち、自然にまたは治療によって正常に戻る不整脈の一種です。「発作性上室性頻拍(Paroxysmal Supraventricular Tachycardia:PSVT)」とも呼ばれます。
発作の特徴は、「突然始まり、突然止まる」ことです。健常な人でも起こることがありますが、頻繁に繰り返すと日常生活に支障をきたします。
PSVTの主な分類には以下の3つがあります。
房室結節回帰性頻拍(AVNRT)
最も一般的で、房室結節内に存在する複数の伝導路を通じて電気信号が循環します
房室回帰性頻拍(AVRT)
副伝導路(例:WPW症候群)を経由して心房と心室の間で再興奮が生じます
心房頻拍(AT)
心房内に異常な興奮の焦点が生じて、心拍が速くなります
発作性頻拍症は若年者にも多く、生活の質(QOL)を低下させることがあります。発作が頻回または重症であれば、根治的なカテーテルアブレーションが有効です。
原因
発作性頻拍症の原因は、心臓の電気信号が異常な経路を通り、再興奮(リエントリー)を引き起こすことによるものです。以下に主な原因を示します。
伝導路の異常
- 房室結節や副伝導路が2本以上存在し、信号がループして戻ってくることで頻拍が起きます(リエントリー機序)
- 先天的な解剖異常(WPW症候群など)で副伝導路がある場合、AVRTの原因となります
心房の異常興奮
- 心房内の一部に異常な自動能を持つ部位(異常焦点)が生じ、そこから繰り返し電気信号が発生することで、心房頻拍(AT)が起こります
誘因・リスク因子
- 過労、ストレス、睡眠不足
- アルコール、カフェイン、喫煙
- 高温環境や脱水による電解質バランスの乱れ
- 心疾患(心筋症、弁膜症、先天性心疾患など)
薬剤性の影響
- 一部の薬(気管支拡張薬、利尿薬など)が誘発因子になることがあります
高齢化と電気伝導系の変性
- 年齢とともに房室結節や伝導路の構造が変化し、頻拍が生じやすくなります
PSVTの大部分は心臓の構造異常がない人にも生じるため、「器質性心疾患がないから安全」とは限らず、症状の出現時には医師の診察が必要です。
症状
発作性頻拍症の症状は、突発的な心拍数の増加により、全身の循環が一時的に不安定になることで現れます。以下に具体的な症状とその背景を解説します。
主要な症状
- 動悸:突然「ドクドク」「ドキドキ」と脈が速くなる感覚。発作が始まる瞬間と止まる瞬間がはっきりしていることが特徴です
- めまい・ふらつき:心拍出量が減少し、脳への血流が一時的に低下することによる
- 失神:心拍が速すぎて血液が十分に全身へ供給されないときに生じる
- 胸部不快感・胸痛:心筋への酸素供給が不足することが原因。特に虚血性心疾患を伴う場合は注意が必要
- 息切れ・呼吸困難:心拍数の増加により呼吸が浅く速くなる
- 吐き気・冷や汗:交感神経の緊張による自律神経症状
発作の持続時間と頻度
- 数秒〜数時間で自然に止まることもあれば、医療介入が必要になることもある
- 発作の頻度は週1回〜年数回と幅があり、誘因により変動する
発作の誘因
- 緊張やストレス、激しい運動後、食後、脱水などにより誘発されやすい
- 明確な誘因がないケースも多い
身体変化の機序
- 頻拍により心室の充満時間が短くなり、心拍出量が減少
- 心房と心室のタイミングが不整となり、全身への酸素供給が不足
- 交感神経活性化により血圧変動や自律神経症状を伴う
非典型例
- 小児では表現が難しく、顔色不良や倦怠感、集中力低下として現れることも
- 高齢者では「何となく調子が悪い」といった漠然とした訴えのみのこともある
このように、発作性頻拍症は幅広い症状を呈し、患者の生活の質を低下させる要因となります。
診断方法と治療方法
診断
- 心電図(ECG)
・発作時の記録が最も重要。P波とQRS波の関係、頻拍の規則性、QRSの幅などを確認
・発作が止まっていると正常に見えるため、発作中の心電図が診断のカギ - ホルター心電図(24時間)
・日常生活中の不整脈を記録し、症状との関連性を確認
・発作が頻繁でない場合は記録に至らないこともある - イベントレコーダー
・発作がまれな場合に有用。発作時に患者自身で記録ボタンを押すタイプ - 心臓電気生理学的検査(EPS)
・心臓内にカテーテルを挿入して、異常伝導路の位置や頻拍のメカニズムを確認
・治療(カテーテルアブレーション)と同時に行われることも多い
治療
- 急性期の治療(発作時の対処)
・迷走神経刺激法(バルサルバ手技、冷水顔面浸漬など)で発作停止を図る
・薬物療法:ATP(アデノシン三リン酸)、Ca拮抗薬、β遮断薬などで心拍を抑制
・血行動態が不安定な場合には電気的除細動(カルディオバージョン)を行う - 慢性期の治療(再発予防)
・抗不整脈薬:発作の頻度や重症度に応じて、IC群やIII群薬を用いる
・ただし副作用や適応に注意が必要 - カテーテルアブレーション
・異常伝導路や焦点を高周波で焼灼し、再発を防ぐ根治的治療
・治療成功率は90%以上、再発率は5〜10%
・比較的若年者に適応が広く、QOL改善に寄与する
生活指導
- アルコール、カフェイン、脱水、ストレスを避ける
- 発作の兆候や誘因を記録することで管理が容易になる
患者の年齢や生活背景を考慮し、治療方針を個別に調整することが重要です。
予後
発作性頻拍症は命に関わる病態ではありませんが、頻回な発作や血行動態の変化が生活に大きな影響を与えることがあります。適切な治療によって、予後は非常に良好です。
予後良好な例
- 発作の頻度が少なく、症状が軽い場合
- 薬物療法またはアブレーションで発作が完全に消失した場合
予後不良のリスク
- 心房細動や心室性頻拍への移行がある場合
- 発作中の血圧低下、失神、心不全を伴うケース
- 高齢者や心疾患の合併がある例
治療成績
- カテーテルアブレーションの成功率は90〜95%
- 再発しても再アブレーションで対応可能
QOL(生活の質)への影響
- 動悸やめまいが繰り返されることで、日常生活や仕事に支障をきたすことがある
- 不安障害やパニック症状を併発することもある
フォローアップの必要性
- 薬物療法中の副作用や効果確認
- アブレーション後の再発確認
適切な治療選択と継続的な管理により、発作性頻拍症は良好なコントロールが可能です。
予防
発作性頻拍症は完全に予防することは難しいものの、発作の頻度や重症度を抑えることは可能です。以下に主な予防法を示します。
生活習慣の見直し
- 規則正しい睡眠、過労の回避
- 脱水予防(こまめな水分補給)
- アルコール、カフェイン、ニコチンの摂取制限
- 高温多湿環境での過度な運動を避ける
ストレスマネジメント
- 過度な緊張や精神的ストレスが発作の引き金になることがある
- リラクゼーション、呼吸法、マインドフルネスなどが有効
発作の記録と自己管理
- 発作の誘因や状況、持続時間を記録して医師と共有する
- 医療機関への早期受診につながる
定期フォローと治療継続
- 処方薬の飲み忘れを防ぐ
- 再発がある場合は早めに再評価を受ける
- アブレーション後も経過観察を続ける
再発の傾向を把握し、自己管理を徹底することが予防の第一歩です。
関連する病気や合併症
発作性頻拍症は他の心疾患や不整脈と合併することがあり、包括的な管理が重要です。
不整脈の合併
- 心房細動:特にAVRTやATに続発しやすい
- 心室性期外収縮:心房頻拍の持続により誘発されることがある
- 徐脈頻脈症候群:特に高齢者では徐脈と頻脈が交互に出現
心疾患との関連
- 心筋症、弁膜症、冠動脈疾患などの基礎心疾患
- 先天性心疾患(心房中隔欠損、WPW症候群など)
薬物による誘発
- β刺激薬、抗うつ薬、一部の降圧薬などにより誘発されることがある
心理的影響
- 発作に対する恐怖や不安が、パニック障害や不眠の原因となることがある
- QOLの低下や社会生活への影響も見逃せない
生活・社会的合併症
- 運転制限(失神リスクがある場合)
- 職場や家庭での制限、精神的ストレスの蓄積
発作性頻拍症の包括的な診療には、心電図診断だけでなく、生活背景、精神的ケア、再発リスクの予測と管理が不可欠です。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
クラウドドクターの
オンライン診療
クラウドドクターのオンライン診療
クラウドドクターでは、問診内容を元に全国から適したドクターがマッチングされ、あなたの診療を行います。診療からお薬の処方までビデオ通話で受けられるため、お忙しい方にもおすすめです。
-
24時間365日
いつでも診療OK -
保険診療が
ご利用可能 -
お近くの薬局やご自宅で
お薬の受取り可能
■ 参考・出典
日本不整脈心電学会「頻拍性不整脈治療ガイドライン」(https://new.jhrs.or.jp/)
MSDマニュアル プロフェッショナル版「発作性上室性頻拍」(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional)
厚生労働省 e-ヘルスネット「不整脈」(https://kennet.mhlw.go.jp/home)
■ この記事を監修した医師
石見 成史医師 いしみ内科・心臓内科クリニック
大阪医科大学 卒業
父、祖父の代より60年以上、地元の健康を守るお手伝いをしてきました。
今まで循環器内科を専門として、心不全、冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞)、不整脈、下肢閉塞性動脈硬化症(足の痛みや、足の傷など)を主に治療してきました。
これからは父が行ってきた診療に加え、胸の症状(動悸、息切れ、胸の痛みなど)、足の症状(足の痛み、傷など)などで困ることがあればいつでもご相談ください。
2011年3月 大阪医科大学卒業
2011年4月 大阪大学医学部付属病院 初期研修医
2012年4月 大阪府立急性期・総合医療センター(現大阪急性期・総合医療センター) 初期研修医
2013年4月 大阪大学医学部付属病院 循環器内科 入局
2013年4月 大阪府立急性期・総合医療センター(現大阪急性期・総合医療センター) 心臓内科
2016年4月 JCHO星ヶ丘医療センター 循環器内科
2019年7月 大阪南医療センター 循環器内科
2021年1月 医療法人 石見医院 継ぐ
- 公開日:2026/02/17
- 更新日:2026/02/17
クラウドドクターは24時間365日対応
現在の待ち時間
約3分