心房細動しんぼうさいどう

心房細動は、心房が不規則に震えることで心拍が乱れ、動悸や息切れを引き起こす不整脈の一種です。加齢とともに増加し、心原性脳梗塞の主要原因でもあります。治療には抗凝固療法やアブレーションが行われます。

心房細動

心房細動とは?

心房細動とは、心臓の上部にある心房が1分間に300〜600回という高頻度で無秩序に興奮し、本来の収縮ができなくなる不整脈の一種です。その結果、心室へ伝わる信号も不規則になり、脈が不規則で速くなることが特徴です。

心房細動には、大きく分けて3つの型があります。発作性心房細動は短時間(7日未満)で自然に停止するもので、慢性化することもあります。持続性心房細動は7日以上続くもので、医療的介入により停止が必要です。永続性心房細動は医師と患者で停止を目指さず、持続することを受容した状態です。

心房細動が起こると、心房の収縮が失われるため、心房内に血液がよどみ、血栓ができやすくなります。この血栓が脳に飛ぶと脳梗塞を引き起こし、重篤な後遺症や突然死の原因となります。特に高齢者では心房細動の有病率が高く、脳卒中予防の観点からも重要な管理対象です。

心房細動は日本でも患者数が増加傾向にあり、超高齢社会において重要な心血管疾患の一つとされています。早期診断と適切な治療が、予後の改善とQOLの維持に不可欠です。

原因

心房細動は、心臓の電気伝導系の異常により、心房が不規則に興奮することで起こります。その原因は多岐にわたりますが、以下のように分類できます。

加齢

  • 加齢により心房の電気伝導路が変性し、異常興奮が発生しやすくなります
  • 65歳以上で急激に有病率が上昇します

心疾患

  • 高血圧性心疾患:左心房が拡大しやすく、心房細動を引き起こす土台となります
  • 弁膜症:特に僧帽弁疾患は心房への圧負荷を増加させます
  • 心筋梗塞、心不全、肥大型心筋症などでも発症リスクが高まります

生活習慣・外的因子

  • 大量飲酒:いわゆる「休日心房細動」などが生じる可能性があります
  • 睡眠時無呼吸症候群:陰圧負荷により心房構造が変化します
  • 運動過多(マラソンなどの持久系スポーツ)やストレスもリスク因子とされています

その他の要因

  • 甲状腺機能亢進症や電解質異常(特にカリウムやマグネシウムの異常)
  • 薬剤(気管支拡張薬、抗うつ薬など)
  • 心臓手術後、肺疾患、慢性腎不全

これらの要因が単独あるいは複合して心房細動の発症に関与します。発症リスクが高い人では、生活習慣の改善や基礎疾患の管理が重要です。

症状

心房細動の症状は、心拍数の不規則性や頻度により個人差が大きく、無症状で経過することもあります。症状は心拍出量の低下と自律神経の反応に起因します。

主な症状

  • 動悸:突然「ドキドキ」と心臓が乱れる感覚
  • 息切れ:心拍数が多くなり、酸素供給が追いつかなくなる
  • めまい・ふらつき:心拍出量の不安定化により、脳血流が一時的に減少
  • 胸部不快感:心臓のリズム異常による不安感、締め付けられるような感じ
  • 疲労感・脱力感:心機能の効率が落ち、全身の代謝が低下する
  • 失神:高度の頻脈や徐脈、血栓による一過性脳虚血が原因

発作性と慢性での違い

  • 発作性心房細動では、数分〜数日間で症状が始まり、自然に止まることもある
  • 持続性または永続性心房細動では、慢性的な症状が続き、日常生活に支障を来すことも

心房細動による身体変化

  • 左心房の拡大:不整脈の持続により、心房のリモデリングが進行
  • 心室の負荷増大:頻脈により心室の拡張・収縮機能が低下し、心不全を合併することもある
  • 血栓形成:心房の収縮機能低下により、特に左心耳に血液が停滞しやすくなる

無症候性心房細動

  • 全体の約30%が無症状で、脳梗塞や検診で偶然発見されることも
  • 無症状であっても脳塞栓リスクは有症状例と同等かそれ以上

心房細動は「気づかない不整脈」としても知られており、早期の検出が重要です。

診断方法と治療方法

診断

  1. 安静時心電図
    ・不規則なRR間隔とP波の消失(f波の出現)により診断
    ・典型例では1回の記録で診断可能
  2. ホルター心電図(24時間)
    ・発作性や無症候性心房細動の発見に有用
  3. イベントレコーダー・植込み型心電計
    ・不定期な発作の記録に使用される長期モニタリング機器
  4. 心エコー
    ・左心房の大きさ、弁膜症の有無、左心室の収縮力などを評価
    ・経食道心エコーでは左心耳内血栓の有無を確認可能
  5. 血液検査
    ・甲状腺機能や電解質、腎機能の評価
    ・抗凝固薬導入前の基礎データ確認

治療

  1. 心拍数(レート)コントロール
    ・β遮断薬、Ca拮抗薬、ジギタリスなどで心拍数を制限し、症状の改善と心機能保護を図る
  2. 洞調律(リズム)コントロール
    ・抗不整脈薬(シベンゾリン、プロパフェノン、アミオダロンなど)で正常リズムの回復と維持を目指す
    ・電気的除細動(カルディオバージョン)で急性発作に対応
  3. 抗凝固療法(脳梗塞予防)
    ・CHADS2またはCHA2DS2-VAScスコアで脳梗塞リスクを評価
    ・ワルファリンまたはDOAC(直接作用型経口抗凝固薬)で血栓予防を行う
    ・出血リスク(HAS-BLEDスコア)とバランスをとって判断
  4. カテーテルアブレーション
    ・肺静脈起源の異常電気信号を焼灼し、再発を防ぐ治療法
    ・再発率はあるが、症状の劇的改善が見込める
  5. 心房細動に伴う基礎疾患の管理
    ・高血圧、心不全、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群などの治療が重要

治療は患者の年齢、症状、持病、希望を考慮して個別に決定されます。

予後

心房細動の予後は、脳梗塞の有無、心機能の保全状況、抗凝固療法の適切性により大きく異なります。

良好な予後の例

  • 早期に診断され、抗凝固療法と心拍コントロールがうまくいっている場合
  • カテーテルアブレーションで再発が抑えられている場合

不良な予後の因子

  • 抗凝固療法の不適切な中断、服薬アドヒアランスの低下
  • 心不全や構造的心疾患の併存
  • 高齢、糖尿病、脳血管疾患の既往

脳梗塞のリスク

  • 非弁膜症性心房細動では年間平均5%程度が脳梗塞を発症
  • CHADS2スコアが高いほどリスクが増加

死亡率とQOLへの影響

  • 心房細動があると全体的な死亡率が上昇すると報告されている
  • 動悸や不安、服薬の負担などで生活の質が低下することも

心房細動は進行性疾患であるため、長期的視野での治療とモニタリングが必要です。

予防

心房細動の予防は、一次予防と再発予防に分けられます。以下に主な方法を示します。

一次予防(発症予防)

  • 高血圧、糖尿病、心不全、弁膜症などのリスク因子を管理
  • 塩分制限、体重管理、適度な運動で心房負荷を軽減
  • 飲酒制限、睡眠時無呼吸症候群の評価と治療
  • ストレス管理、規則正しい生活習慣

再発予防

  • 抗不整脈薬の継続と定期的な心電図フォロー
  • 必要に応じてアブレーション治療を検討
  • 薬の飲み忘れ防止と副作用の確認

脳梗塞予防

  • 抗凝固療法の継続と定期的な血液検査(特にワルファリン服用者)
  • 出血の兆候に注意し、医師に随時相談

予防には患者自身の理解と医療チームの連携が不可欠です。

関連する病気や合併症

心房細動は多くの疾患と関連しており、以下のような病態を合併・誘発します。

心血管疾患

  • 高血圧性心疾患:最も頻度の高い合併症
  • 心不全:心房細動により拍出効率が低下
  • 心筋梗塞、虚血性心疾患:心房細動と共存することが多い

脳梗塞(心原性脳塞栓症)

  • 左心耳にできた血栓が脳動脈に飛ぶことで発症
  • 重篤な後遺症や突然死の原因となることもある

その他の合併症

  • 慢性腎不全:抗凝固療法中の腎機能低下に注意
  • 消化管出血:抗凝固療法の副作用
  • 甲状腺疾患(特に甲状腺機能亢進症)

精神的影響

  • 不安障害、抑うつ状態を併発しやすい
  • 服薬管理へのストレスも見逃せない

社会的制限

  • 運転制限(特に失神を伴う場合)
  • 高リスク職業(操縦士、重機操作など)への制限

これらを総合的に管理することが、心房細動の予後と生活の質の改善につながります。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

日本循環器学会「心房細動治療ガイドライン」(https://www.j-circ.or.jp/)

MSDマニュアル プロフェッショナル版「心房細動」(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional)

厚生労働省 e-ヘルスネット「心房細動」(https://kennet.mhlw.go.jp/home)

■ この記事を監修した医師

石見 成史医師 いしみ内科・心臓内科クリニック

大阪医科大学 卒業

父、祖父の代より60年以上、地元の健康を守るお手伝いをしてきました。
今まで循環器内科を専門として、心不全、冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞)、不整脈、下肢閉塞性動脈硬化症(足の痛みや、足の傷など)を主に治療してきました。
これからは父が行ってきた診療に加え、胸の症状(動悸、息切れ、胸の痛みなど)、足の症状(足の痛み、傷など)などで困ることがあればいつでもご相談ください。

2011年3月 大阪医科大学卒業
2011年4月 大阪大学医学部付属病院 初期研修医
2012年4月 大阪府立急性期・総合医療センター(現大阪急性期・総合医療センター) 初期研修医
2013年4月 大阪大学医学部付属病院 循環器内科 入局
2013年4月 大阪府立急性期・総合医療センター(現大阪急性期・総合医療センター) 心臓内科
2016年4月 JCHO星ヶ丘医療センター 循環器内科
2019年7月 大阪南医療センター 循環器内科
2021年1月 医療法人 石見医院 継ぐ

  • 公開日:2026/02/17
  • 更新日:2026/02/17

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