かぜ症候群かぜしょうこうぐん
かぜ症候群は、ウイルスによる上気道感染で、鼻水、喉の痛み、咳、発熱などの症状を引き起こします。一般的に軽症で、自然に回復しますが、休養と水分補給が重要です。
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かぜ症候群とは?
かぜ症候群とは、鼻やのど、気管支などの上気道と呼ばれる部分にウイルスが感染し、炎症を引き起こす病気の総称です。正式には「急性上気道炎」とも呼ばれ、くしゃみ、鼻水、咳、のどの痛みなどの症状が現れます。原因となるウイルスの種類は多く、年間を通じて患者が見られますが、特に気温差が大きく乾燥しやすい秋から冬にかけて増加します。日常的に発症しやすい病気であり、健康な成人でも年に数回はかかることがあります。
かぜ症候群の「かぜ」は特定のウイルスや菌を指すものではなく、複数のウイルスによって引き起こされる上気道炎の総称として用いられています。重症化することは稀ですが、乳幼児や高齢者、基礎疾患を持つ人では重篤な合併症を引き起こす可能性があるため注意が必要です。一般的には数日から1週間程度で自然に回復しますが、体調管理や初期対応が重要とされます。
原因
かぜ症候群の主な原因はウイルス感染です。これまでに200種類以上のウイルスが関与するとされており、なかでも頻度が高いのはライノウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス、パラインフルエンザウイルスなどです。ライノウイルスは特に秋に多く、軽症で済むことが多いのに対し、アデノウイルスやパラインフルエンザウイルスは高熱やのどの強い痛みを引き起こすことがあります。
感染経路には飛沫感染と接触感染の2つがあります。飛沫感染は、咳やくしゃみによって空中に飛び散ったウイルスを吸い込むことによって生じます。接触感染は、ドアノブやつり革などに付着したウイルスに触れた手で、口や鼻、目などをこすることによって感染が成立します。
また、乾燥した環境や睡眠不足、栄養の偏り、ストレスなどによって免疫力が低下していると、ウイルスに感染しやすくなります。特に気温差が大きい季節の変わり目は、体温調節機能の乱れも重なり、かぜをひきやすい時期といえます。
症状
かぜ症候群の症状は、感染したウイルスの種類や感染部位、個人の免疫状態によって異なりますが、典型的にはのどの痛み、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、咳、軽度の発熱などが見られます。多くの場合、症状は徐々に進行し、のどの違和感から始まり、次第に鼻や気道に症状が広がっていきます。
局所症状としては、ウイルスによる粘膜の炎症により、鼻水やのどの痛み、鼻づまりが起こります。咳は気道粘膜への刺激や分泌物の増加に対する生理的な防御反応として現れます。また、のどの炎症が声帯に波及することで声がれが生じることもあります。
全身症状としては、倦怠感、寒気、頭痛、筋肉痛、食欲低下などが見られます。これらはウイルスに対する体の免疫反応によって生じるもので、特に発熱は免疫系が産生するサイトカインという物質が脳の体温中枢に作用して起こります。一般的には38度未満の微熱が多いですが、小児では高熱になることもあります。
かぜの症状は通常3~5日程度でピークを迎え、その後徐々に軽快しますが、咳や鼻水などの症状が1週間以上続くこともあります。特に咳が長引く場合は、咳後症候群や気道過敏状態に移行していることがあります。
診断方法と治療方法
診断
かぜ症候群の診断は、主に問診と視診、聴診などの身体診察によって行われます。発熱やのどの痛み、鼻水、咳などの症状があり、ウイルス性と考えられる場合には特別な検査は不要です。しかし、症状が重い場合や他の感染症との鑑別が必要な場合には、追加検査が行われることがあります。
例えば、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症が疑われる場合には、迅速抗原検査やPCR検査が行われます。さらに、ウイルス肺炎や細菌性肺炎、器質化肺炎の合併の場合は胸部X線検査や血液検査を実施することもあります。血液検査では白血球数やCRP(C反応性タンパク)などを測定し、炎症の程度や細菌感染の有無を判断します。
治療
治療は対症療法が中心です。ウイルスに直接効く薬は一般的なかぜには存在しないため、症状に応じた薬剤を使用します。発熱には解熱鎮痛薬、咳には鎮咳薬、鼻水や鼻づまりには抗ヒスタミン薬などが処方されます。のどの痛みに対してはトローチや含嗽薬が用いられることもあります。
また、十分な休養と水分補給、栄養バランスの取れた食事が回復を早める鍵となります。抗生物質はウイルスには無効ですが、細菌による二次感染が疑われる場合には使用されます。市販薬で症状を軽減させることも可能ですが、症状が重い場合や長引く場合には医療機関を受診することが望まれます。
予後について
かぜ症候群は一般的に予後良好な病気であり、多くの場合は数日から1週間程度で自然に回復します。軽症で済むことが多く、特別な治療を行わずとも日常生活を送る中で徐々に症状が軽快していきます。ただし、回復までの期間には個人差があり、免疫力や基礎疾患の有無、感染したウイルスの種類によって異なる経過をたどることがあります。
高齢者や乳幼児、基礎疾患を持つ方では、回復が遅れたり、肺炎や気管支炎などの合併症を引き起こす可能性があります。また、かぜの後に咳だけが長く残る「咳後症候群」や、声のかすれが続く「声帯炎」がみられることもあり、これらの症状が数週間以上続くこともあります。
かぜをこじらせないためには、発症初期の段階で無理をせず、安静を保つことが重要です。発熱や咳などの症状がある間は、周囲への感染を防ぐためにも外出を控え、体を十分に休ませる必要があります。適切な対応を行うことで、予後はさらに良好になります。
予防について
かぜ症候群を予防するためには、日常的な感染対策が非常に重要です。基本的な対策としては、こまめな手洗いが有効です。石けんと流水による30秒以上の手洗いによって、多くのウイルスを物理的に除去することができます。特に外出先からの帰宅時や、食事前、トイレ後などは徹底した手洗いが推奨されます。
また、マスクの着用もうがいとともに予防効果があります。飛沫の拡散を防ぐだけでなく、口や鼻を手で触ることを防ぎ、接触感染の予防にもなります。乾燥した環境はウイルスの生存に適しているため、室内の湿度を50〜60%に保つことで粘膜の乾燥を防ぎ、感染リスクを減らすことができます。
加えて、免疫力を維持することも重要です。栄養バランスの良い食事、十分な睡眠、適度な運動、ストレスの管理は免疫機能の正常な働きを支えます。特に冬場や季節の変わり目など、体調を崩しやすい時期にはこれらの習慣が予防に直結します。
また、かぜの症状と類似するインフルエンザや新型コロナウイルスに対するワクチン接種も、自身と周囲の人を守る上で有効な手段です。予防は一人ひとりの心がけにより実現できるため、継続的な対策が求められます。
関連する病気や合併症
かぜ症候群は通常、軽度で自然に治癒する病気ですが、状況によっては合併症を引き起こすことがあります。特に免疫力が低下している人や小児、高齢者では注意が必要です。かぜに関連する主な病気や合併症には以下のようなものがあります。
まず、急性副鼻腔炎があります。かぜによって鼻腔の粘膜が炎症を起こし、副鼻腔への通気や排出が妨げられると、細菌が繁殖しやすくなり、副鼻腔炎を発症することがあります。鼻づまりや頭痛、頬の痛みなどの症状が現れます。
次に中耳炎です。特に乳幼児に多くみられ、かぜで鼻やのどに炎症が起きた際に、耳管を通じて中耳に感染が波及すると、中耳の内部に膿がたまり、耳の痛みや発熱、耳だれが生じます。
また、気管支炎や肺炎などの下気道感染症に進展することもあります。かぜのウイルスによって気道の防御機能が低下し、細菌が気管支や肺に感染しやすくなるためです。咳や痰、呼吸困難、発熱などの症状が悪化する場合は注意が必要です。
さらに、喘息を持つ人では、かぜが引き金となって気道の過敏性が高まり、発作を誘発することがあります。かぜの後に咳だけが長く続く咳後症候群もよくみられる合併症の一つです。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「かぜ症候群」(https://kennet.mhlw.go.jp/home)
- 日本感染症学会「感染症とは」(https://www.kansensho.or.jp/modules/about/index.php?content_id=1)
■ この記事を監修した医師

石井 誠剛医師 イシイ内科クリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒後、済生会茨木病院で研修を行い、日本生命病院で救急診療科、総合内科勤務。
その後、近畿中央呼吸器センターで勤務後、西宮市立中央病院呼吸器内科で副医長として勤務。
イシイ内科クリニックを開設し、地域に密着し、 患者様の気持ちに寄り添った医療を提供。
日本生命病院では総合内科医として様々な内科診療に携わり、近畿中央呼吸器センターでは呼吸器の専門的な治療に従事し、 西宮市立中央病院では呼吸器内科副医長として、地域医療に貢献。
抗加齢学会専門医として、アンチエイジングだけを推し進めるのではなく、適切な生活指導と内科的治療でウェルエイジングを提供していくことを目指している。
- 公開日:2025/07/08
- 更新日:2025/07/10
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