肺結核はいけっかく

肺結核は、結核菌により肺に炎症が起きる感染症で、咳や痰、発熱、体重減少などが続きます。放置すれば重症化し、他人に感染させる恐れもあるため、早期発見と適切な治療が重要です。長期間の抗菌薬治療と感染対策が基本となります。

肺結核

肺結核とは?

肺結核とは、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)という細菌が肺に感染して炎症を起こす感染症です。かつては「国民病」として恐れられていましたが、抗結核薬の登場により治療可能な病気となりました。ただし現在でも世界的には死亡原因の上位に位置しており、日本でも年間約1万人が発病しています。

結核菌は空気感染するため、患者の咳やくしゃみによって排出された飛沫核(空気中に漂う微細な粒子)を吸い込むことで感染します。感染してもすぐに発病するわけではなく、体内で菌が休眠状態を保つ「潜在性結核感染(LTBI)」となることも多く、免疫力が低下したときに活動性へと移行することがあります。

肺結核は感染性を持つ可能性があるため、診断と同時に隔離や治療の開始が求められます。治療には複数の抗結核薬を長期間にわたって服用する必要があり、治療の中断は薬剤耐性結核(多剤耐性結核)の原因となります。

結核は早期発見・早期治療により完治可能な病気であり、周囲への感染を防ぐ意味でも適切な対応が求められます。

原因

肺結核の原因は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis complex)への感染です。主な感染経路は「空気感染」であり、結核患者が咳やくしゃみをすることで排出された結核菌を含む飛沫核を、周囲の人が吸い込むことで感染が成立します。

感染から発病までの流れ

  • 結核菌は吸い込まれると肺に到達し、肺胞マクロファージに取り込まれます
  • 免疫力が正常な場合、多くは免疫によって制御され「潜在性結核感染」となります
  • 免疫が低下すると、休眠していた結核菌が再活性化し「活動性結核」へと移行します

発病リスクを高める因子

  • 高齢(加齢により免疫力が低下)
  • 糖尿病、腎不全、HIV感染などの基礎疾患
  • がん化学療法やステロイド治療中
  • 喫煙や栄養不良、過労、アルコール依存
  • ホームレス、施設入所者、外国出生者など

感染から発症までの潜伏期間

数週間から数十年に及ぶことがあり、生涯にわたってリスクが残ってしまいます。

潜在性結核感染は発病しなければ他人に感染させることはありませんが、治療対象となることもあり、リスクに応じた検査と管理が必要です。

症状

肺結核の症状は、ゆっくりと進行するのが特徴です。初期はかぜに似た症状が現れますが、次第に慢性的な呼吸器症状と全身症状が目立ってきます。

初期症状(かぜと類似)

  • 微熱、倦怠感
  • 咳、痰(軽度)
  • 食欲低下、体重減少

進行期の主な症状

  • 長引く咳(2週間以上)
  • 粘性または血の混じった痰
  • 血痰、喀血(進行例)
  • 胸痛(吸気時や咳で悪化)
  • 呼吸困難、息切れ
  • 寝汗(夜間に大量の発汗)
  • 発熱(夕方から夜にかけての微熱)
  • 全身倦怠感、体重減少(慢性的な経過)

高齢者における特徴

  • 咳や発熱などの典型的症状が乏しいことがある
  • 認知機能の低下やADLの低下として表れることも
  • 「なんとなく元気がない」「食事量が減った」などの変化に注意が必要

活動性結核と潜在性結核

  • 活動性結核:症状があり、菌を排出している状態。感染性がある
  • 潜在性結核:菌は存在するが、症状や感染性はない

肺外結核

  • 肺以外の臓器(リンパ節、骨、腎臓、脳など)に感染が波及することがあり、「肺外結核」と呼ばれます。症状は感染部位によって多様

肺結核の症状は非常に個人差があり、特に免疫抑制状態や高齢者では典型的でない場合も多いため、症状の持続に注目することが重要です。

診断方法と治療方法

診断

  1. 問診
    ・症状の経過、2週間以上続く咳の有無
    ・既往歴、家族歴、集団生活、施設入所歴、渡航歴なども確認
  2. 胸部X線検査
    ・肺野の浸潤影、空洞形成、線状影などを確認
    ・活動性か陳旧性かの判断材料になるが、確定診断には他検査が必要
  3. CT検査
    ・X線で不明瞭な病変の精密評価に有用
    ・空洞や粟粒結核の検出に特に有効
  4. 喀痰検査
    ・喀痰塗抹検査(抗酸菌染色):迅速だが感度は低い
    ・喀痰培養検査:結核菌の確定診断。2〜6週間かかる
    ・核酸増幅法(PCR):短時間で高精度な検出が可能
  5. ツベルクリン反応・IGRA
    ・潜在性結核感染のスクリーニングに使用
    ・IGRA(インターフェロンγ遊離試験)はBCGの影響を受けにくい

治療

  1. 標準治療(初回発症例)
    ・初期2か月間:イソニアジド(INH)、リファンピシン(RFP)、エタンブトール(EB)、ピラジナミド(PZA)の4剤併用
    続く4か月間:INHとRFPの2剤で維持療法
    ・合計6か月間の服薬が基本(症例により延長あり)
  2. DOTS(直接服薬確認療法)
    ・服薬を確実に継続させるため、医療者が服薬状況を確認する体制
    ・薬剤耐性結核の予防と治癒率向上に寄与
  3. 薬剤耐性結核(MDR-TB、XDR-TB)
    ・標準薬剤に対する耐性がある場合、治療期間が延長し、第二選択薬が必要になる
    ・副作用が強く、入院管理が必要なこともある

結核治療では途中で薬をやめることが最大のリスクであり、医療者との信頼関係と支援体制が重要です。

予後

肺結核は、適切な治療を受ければ治癒が可能な病気です。標準的な抗結核薬治療を6か月間継続することで、約90%以上の治癒率が報告されています。

良好な予後が期待される条件

  • 早期に発見され、治療が迅速に開始された場合
  • 薬剤感受性が良好で、服薬の継続が確実に行われた場合
  • 基礎疾患や免疫不全がない若年者

不良な予後の要因

  • 高齢者や免疫抑制状態
  • 糖尿病、HIV感染などの合併症
  • 多剤耐性結核の発生
  • 服薬の中断による再発や薬剤耐性菌の出現

後遺症としての肺障害

  • 線維化や空洞形成が残ることで、慢性的な呼吸機能障害を起こすことがある

治療中は副作用のチェックも重要で、肝障害や末梢神経障害などが出現することがあります。予後を良好に保つには、医療機関との連携を保ち、指示通りの治療を継続することが重要です。

予防

肺結核の予防には、個人の感染対策と社会全体の対策が必要です

BCG接種

  • 乳児期の定期接種で重症型結核(粟粒結核、結核性髄膜炎)の発症を予防
  • 発症そのものを完全に防ぐわけではないが、重症化のリスクを大きく下げる

潜在性結核感染(LTBI)の治療

  • 感染が疑われる場合、1年以内の発症を防ぐ目的で抗結核薬を内服する
  • 職場や学校などで集団感染の接触者に実施されることがある

感染対策

  • 活動性結核が疑われる場合は、咳エチケットとマスクの着用
  • 病院や施設内では空気感染予防策(陰圧室管理など)を徹底
  • 早期発見と治療開始により周囲への感染拡大を防ぐ

栄養と免疫の維持

  • 栄養バランスの取れた食事、適度な運動、禁煙、十分な休養が結核予防にも効果的

個人と社会が連携した予防策を継続的に行うことで、結核の拡大を抑制できます。

関連する病気や合併症

肺結核は肺だけでなく、さまざまな臓器に波及したり、他の疾患との関連がある感染症です。

肺外結核

  • 結核性髄膜炎:頭痛、意識障害、神経麻痺などを引き起こす重篤な合併症
  • 結核性胸膜炎:胸痛、発熱、胸水貯留
  • 結核性腹膜炎、骨関節結核、腎結核、リンパ節結核など

合併症

  • 肺胞出血、気管支拡張症、肺線維症などの慢性呼吸器合併症
  • 喀血:空洞形成を伴う重症例では大量出血の危険あり
  • 肝障害:治療中の抗結核薬による副作用として発症することがある

併存疾患

  • HIV感染との合併:AIDS患者では結核が日和見感染症として最も多く、致死率も高い
  • 糖尿病、慢性腎不全、悪性腫瘍との合併で免疫力が低下しやすく、治療が難航

これらの関連疾患を適切にマネジメントしながら、肺結核そのものの治療と再発予防を行うことが重要です。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

■ この記事を監修した医師

石井 誠剛医師 イシイ内科クリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒後、済生会茨木病院で研修を行い、日本生命病院で救急診療科、総合内科勤務。
その後、近畿中央呼吸器センターで勤務後、西宮市立中央病院呼吸器内科で副医長として勤務。
イシイ内科クリニックを開設し、地域に密着し、 患者様の気持ちに寄り添った医療を提供。

日本生命病院では総合内科医として様々な内科診療に携わり、近畿中央呼吸器センターでは呼吸器の専門的な治療に従事し、 西宮市立中央病院では呼吸器内科副医長として、地域医療に貢献。
抗加齢学会専門医として、アンチエイジングだけを推し進めるのではなく、適切な生活指導と内科的治療でウェルエイジングを提供していくことを目指している。

  • 公開日:2025/07/16
  • 更新日:2025/07/16

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