甲状腺腫瘍こうじょうせんしゅよう
甲状腺腫瘍は、甲状腺にできる腫瘍性病変で、良性と悪性があります。多くは無症状で偶発的に発見され、超音波検査や穿刺吸引細胞診によって診断されます。悪性の場合でも予後は比較的良好で、適切な治療により管理可能です。

甲状腺腫瘍とは?
甲状腺腫瘍は、甲状腺にできる腫瘍性病変の総称で、良性腫瘍と悪性腫瘍(甲状腺がん)に大別されます。甲状腺に発生する腫瘍の多くは結節として現れ、触診や健康診断、画像検査などで偶然発見されることが多いです。
良性腫瘍には腺腫や嚢胞があり、経過観察で済むことも多いです。一方、悪性腫瘍には乳頭がん、濾胞がん、髄様がん、未分化がんなどがあり、組織型によって進行や治療方針が異なります。
特に乳頭がんは最も多く、ゆっくり進行するため、早期に発見されれば治癒も期待できます。腫瘍の性質や大きさ、周囲臓器への影響を総合的に判断して治療方針が決まります。
原因
甲状腺腫瘍の正確な原因はまだ完全には解明されていませんが、遺伝的要因や環境要因、ホルモンの影響などが複雑に関与していると考えられています。
考えられている要因
- 遺伝的素因:特に髄様がんは家族性(MEN症候群)と関連
- 放射線被ばく歴:小児期の頸部への放射線照射歴はリスクを高める
- 性ホルモンの影響:女性に多く、エストロゲンとの関与が示唆されている
- 慢性的なTSH刺激:甲状腺ホルモンが少ない状態が続くと、腫瘍化のリスクが上昇
- ヨウ素摂取の過不足:地域的なバランスの乱れが影響する可能性あり
明らかな予防法は確立されていませんが、定期的な健康管理が早期発見につながります。
症状
甲状腺腫瘍の多くは初期に症状を示さず、健康診断や画像検査などで偶然発見されます。しかし、腫瘍が大きくなると周囲組織を圧迫し、症状を引き起こすことがあります。
代表的な症状
- 頸部のしこり:皮膚の上から触れられる腫瘤
- 嚥下障害:食べ物を飲み込みにくい
- 呼吸困難:気道を圧迫する場合
- 声のかすれ(嗄声):反回神経への影響
- 頸部の腫れや圧迫感
- リンパ節の腫れ(進行がんの場合)
その他
- 良性腫瘍や嚢胞では症状が出ないことが多い
- 悪性腫瘍でもゆっくり進行するため、かなり進行するまで気づかれないこともある
- ホルモン異常(機能性腫瘍)はまれ
進行すると周囲の器官に影響を及ぼすため、早期発見が重要です。
診断方法と治療方法
診断
- 問診・視診・触診:腫瘍の有無、大きさ、可動性などを確認
- 血液検査
- 甲状腺ホルモン(TSH、FT4、FT3)の測定
- サイログロブリンやカルシトニン(髄様がんのマーカー) - 甲状腺超音波検査(エコー)
- 結節の大きさ、形状、内部構造(石灰化、血流など) - 穿刺吸引細胞診(FNA)
- 細い針で細胞を採取し、良性・悪性の判定を行う - CT/MRI/PET-CT:進行例や転移評価に使用されることもある
治療
- 良性腫瘍:定期的な経過観察が基本、サイズ増大や圧迫症状あれば手術
- 悪性腫瘍(がん)
- 外科的切除(甲状腺全摘または部分摘)
- 放射性ヨウ素内用療法(乳頭がん・濾胞がん)
- ホルモン補充療法(術後の甲状腺ホルモン管理)
- 髄様がんや未分化がんでは分子標的薬や放射線療法が適応される場合もある
診断・治療は専門医による総合的な判断が必要です。
予後
甲状腺腫瘍の予後は、腫瘍の種類や進行度、治療の適応状況によって大きく異なりますが、一般に悪性腫瘍であっても治療成績は良好です。
良好な予後が期待できるケース
- 乳頭がん:最も頻度が高く、進行が緩やかで、10年生存率90%以上
- 濾胞がん:比較的予後良好だが、遠隔転移しやすいため注意が必要
- 良性結節:定期的な経過観察で十分対応可能
注意が必要なケース
- 髄様がん:予後は中等度、早期発見と家族歴の確認が重要
- 未分化がん:進行が非常に速く、予後不良
- 再発や転移を起こす場合、追加治療が必要になることがある
早期診断と治療によって、大半の甲状腺がんは制御可能です。
予防
甲状腺腫瘍の発症自体を確実に防ぐ方法はありませんが、いくつかのリスク因子を避け、早期発見につなげることで重症化を防ぐことができます。
予防・早期発見のための工夫
- 頸部のしこりに気づいたら早めに受診
- 放射線被ばく歴のある人は定期的な検査を
- 甲状腺疾患の家族歴がある場合は注意深く観察
- 過度なヨウ素摂取を避け、バランスの良い食生活を心がける
- 喫煙を控える(髄様がんとの関連あり)
- 健康診断や人間ドックでの超音波検査を活用
発見された結節がすべてがんであるとは限らず、適切な評価が重要です。
関連する病気や合併症
甲状腺腫瘍は、がんを含む疾患としてだけでなく、周囲の臓器や機能への影響にも注意が必要です。また、特定の疾患とは合併しやすいこともあります。
主な関連疾患・合併症
- 甲状腺機能異常:一部の腫瘍で甲状腺ホルモンの過剰・不足が生じる
- 声帯麻痺:手術や進行がんで反回神経が障害される
- 嚥下障害、気道圧迫:大型腫瘍による機械的圧迫
- リンパ節転移、遠隔転移(悪性腫瘍)
- 多発性内分泌腫瘍症(MEN):髄様がんとの関連
- 再発:特に不完全切除例や高リスク病変でみられる
これらの合併症は、治療計画や長期管理の中で重視されます。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
厚生労働省e-ヘルスネット「甲状腺腫瘍」(https://kennet.mhlw.go.jp/home)
日本甲状腺学会「甲状腺腫瘍診療ガイドライン」(https://www.japanthyroid.jp/)
日本内科学会「内科学 第11版」
国立国際医療研究センター「甲状腺疾患の診断と治療」(https://www.ncgm.go.jp/)
■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。
「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。
医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。
医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。
- 公開日:2025/07/16
- 更新日:2025/07/16
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