やせ症やせしょう
やせ症は、BMIが18.5未満の状態を指し、栄養不足によってさまざまな身体的・精神的な健康リスクを伴います。特に若年女性では無月経や骨量減少の原因にもなり、過度なダイエットやストレスが背景にあることが多く、適切な栄養管理と心理的支援が重要です。

やせ症とは?
やせ症とは、身長に対する体重が著しく少ない状態、つまり体格指数(BMI)が18.5未満である状態を指します。特にBMI17.0未満の場合は中等度以上のやせとされ、健康にさまざまな悪影響を及ぼす可能性があります。
やせは外見上の問題にとどまらず、低栄養状態に伴う免疫力低下や筋肉量減少、ホルモン異常、骨密度低下などを引き起こしやすく、放置すれば生命に関わる場合もあります。特に若年女性に多く、過度なダイエットや体型へのこだわり、摂食障害が背景にあることも少なくありません。
やせ症は軽視されがちですが、医療的・栄養的な介入が必要な疾患の一つです。
原因
やせ症の原因は多岐にわたりますが、主に摂取エネルギーの不足と消費エネルギーの過剰、そして疾患に伴う栄養吸収・代謝異常が挙げられます。背景には心理的・社会的要因も複雑に絡み合っています。
主な原因
- 過度なダイエットや偏食:特に若年女性に多い
- 摂食障害(神経性食欲不振症など):極端な摂取制限や体型への強いこだわり
- 過剰な運動習慣:アスリートに多く見られる
- 慢性疾患:がん、消化器疾患、内分泌疾患(甲状腺機能亢進症など)
- 精神疾患:うつ病、統合失調症などによる食欲低下
- 社会的要因:経済的困窮、孤食、高齢による食事量の減少など
その他
高齢者では味覚低下や嚥下障害が食事量の減少につながることもあります
原因に応じた評価と治療が不可欠です。
症状
やせ症により栄養素が不足すると、全身の臓器機能や代謝に影響を及ぼし、身体的・精神的なさまざまな症状が現れます。症状の現れ方は個人差がありますが、慢性的に進行するケースが多く見られます。
身体的症状
- 疲れやすい、全身倦怠感
- 冷え性(体温低下)
- 月経不順、無月経(女性ホルモン低下による)
- 貧血、顔色不良、ふらつき
- 骨密度低下、骨粗鬆症のリスク上昇
- 筋力の低下、転倒しやすくなる
- 肌荒れ、髪の脱毛、爪のもろさ
- 便秘(腸管の運動機能低下)
- 感染しやすい(免疫力の低下)
精神的・心理的症状
- 集中力の低下
- 不安感や抑うつ傾向
- 自己評価の低下、社会的孤立
日常生活に支障をきたすこともあり、早期の対処が必要です。
診断方法と治療方法
診断
- BMI(体格指数)の測定:18.5未満でやせと診断
- 身体計測:体重、体脂肪率、筋肉量
- 問診:食生活、ダイエット歴、運動習慣、月経の有無、精神状態など
- 血液検査:貧血(Hb)、アルブミン、亜鉛、電解質、甲状腺ホルモン、ビタミン、炎症反応など
- 骨密度検査:骨量の減少を評価(特に女性)
- 必要に応じて内視鏡・画像検査:消化器疾患の除外
- 心理面の評価:摂食障害やうつ状態のスクリーニング
治療
- 食事療法:管理栄養士によるバランスの取れた栄養指導
- 栄養補助食品の使用(高エネルギー・高たんぱく)
- 運動療法:筋肉量の維持・向上を目的に軽度な運動を実施
- 精神的サポート:カウンセリング、心理療法
- 摂食障害の場合は専門的な治療(精神科との連携)
個別性の高い対応が求められる疾患です。
予後
やせ症の予後は、原因や重症度、治療への取り組み状況に大きく左右されます。早期に原因を特定し、適切な栄養介入と生活支援が行われれば、回復は十分可能です。
予後が良好なケース
- 一時的なダイエットによる軽度のやせで、生活改善ができた
- 若年で早期に治療開始した場合
- 家族や周囲の理解と支援がある環境
予後が悪化しやすいケース
- 摂食障害が背景にある場合(慢性化しやすい)
- 高齢者で食事量の改善が難しい場合
- 精神疾患が併存し、栄養介入が困難なケース
- 無月経や骨粗鬆症が長期に続くと不可逆的な障害を残すこともある
体重回復だけでなく、生活の質(QOL)を高めることが長期的な目標です。
予防
やせ症の予防には、日常的な栄養バランスの確保と、過度な体重コントロールに対する正しい知識の普及が重要です。特に成長期や女性では、無理なダイエットを避けることが基本です。
食生活の予防策
- 3食を規則正しく摂る
- 主食・主菜・副菜をそろえる食事構成
- エネルギーとたんぱく質をしっかり摂取
- ビタミン、ミネラルを多く含む食材を意識
- 清涼飲料や菓子パンに偏らない
心理的サポート
- 体型や体重に対する過度なこだわりを持たない
- SNSやメディアの影響を適切に理解する
- 家族や教育現場での正しい栄養教育の実施
高齢者において
- 噛む力、飲み込みの機能を維持する
- 孤食を避ける環境整備
- 低栄養を早期に見つけるスクリーニングが重要
年齢やライフスタイルに応じた予防対策が求められます。
関連する病気や合併症
やせ症は単に体重が少ない状態にとどまらず、全身の健康に深刻な影響を与える多くの合併症と関連しています。栄養不足の持続は、あらゆる臓器系に障害をもたらします。
主な合併症
- 月経異常、無月経(女性ホルモン低下)
- 骨粗鬆症、骨折リスクの増加
- 貧血(鉄・ビタミン不足)
- 免疫力低下による感染症
- 筋力低下、サルコペニア
- 心不全(重度の場合)
- 消化機能の低下(便秘、胃腸不調)
- うつ病、不安障害、摂食障害との併存
- 認知機能の低下(高齢者)
- 低体温、血圧低下、低血糖
これらを防ぐためにも、やせ症を放置せず、医療的支援を受けることが重要です。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
厚生労働省e-ヘルスネット「低体重の健康リスク」(https://kennet.mhlw.go.jp/home)
日本摂食障害学会「摂食障害とやせ」(http://www.jsed.org/)
日本内科学会「内科学 第11版」
国立国際医療研究センター「低栄養とサルコペニア」(https://www.ncgm.go.jp/)
■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。
「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。
医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。
医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。
- 公開日:2025/07/16
- 更新日:2025/07/16
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