1型糖尿病いちがたとうにょうびょう

1型糖尿病は、自己免疫反応などによって膵臓のインスリン分泌が失われる疾患です。突然の発症が多く、血糖を下げるホルモンであるインスリンが不足するため、インスリン注射による継続的な治療が不可欠です。早期診断と血糖コントロールが合併症の予防に重要です。

1型糖尿病とは?

1型糖尿病とは、膵臓にあるインスリンを分泌するβ細胞が自己免疫によって破壊され、インスリンがほとんど、あるいはまったく分泌されなくなる病気です。インスリンは血糖を下げる唯一のホルモンであるため、その欠乏により高血糖が持続し、さまざまな症状や合併症を引き起こします。

主に小児期や若年成人に多く見られますが、近年では40歳以降に発症する例もあり、全年齢層での発症が確認されています。1型糖尿病は突然発症することが多く、初期症状として頻尿、のどの渇き、体重減少などが見られ、重症化すると糖尿病性ケトアシドーシスという生命に関わる状態になることもあります。

根治療法はなく、自己注射またはインスリンポンプによるインスリン補充が生涯にわたって必要です。

原因

1型糖尿病は、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が破壊されることにより発症しますが、その正確な原因は完全には解明されていません。遺伝的要因と環境因子が関与していると考えられています。

主な原因と要因

  • 自己免疫反応:免疫系が誤って自分の膵β細胞を攻撃する(自己抗体の存在が確認される)
  • ウイルス感染:コクサッキーウイルス、風疹ウイルスなどが引き金となる場合がある
  • 遺伝的要因:HLA(ヒト白血球抗原)の特定の型を持つ人が発症しやすい
  • 環境因子:離乳食の開始時期、牛乳摂取、ビタミンD不足などの仮説があるが、確定的ではない

1型糖尿病は2型糖尿病とは異なり、生活習慣の乱れによって発症するものではありません。

症状

1型糖尿病はインスリンの分泌が急激に失われることで、急速に高血糖状態に陥ります。そのため、発症初期から明らかな症状が見られることが特徴です。

典型的な症状

  • 頻尿:血糖が尿に漏れ出し、体内の水分が失われる
  • 口渇:脱水によって強いのどの渇きを感じる
  • 体重減少:エネルギー源としてのブドウ糖が利用できず、筋肉や脂肪が分解される
  • 倦怠感:慢性的なエネルギー不足による
  • 吐き気・腹痛:進行するとケトン体の蓄積により現れる

重症化時の症状

  • 糖尿病性ケトアシドーシス:
     - 激しい吐き気、嘔吐
     - 深く速い呼吸(クスマウル呼吸)
     - 意識障害、昏睡、脱水、血圧低下など
     - 放置すれば死に至る危険性がある

早期にインスリン治療を開始すれば、これらの症状は改善します。

診断方法と治療方法

診断

・血液検査
 - 血糖値(空腹時血糖、随時血糖、HbA1c)
 - Cペプチド:インスリン分泌の残存の有無を確認
 - 自己抗体(GAD抗体、IA-2抗体など)の測定
・尿検査:尿糖・尿ケトン体の有無を確認
・症状と発症経過:急激な体重減少や脱水、ケトアシドーシスの有無なども重要な判断材料

治療

・インスリン療法(必須)
 - 注射またはインスリンポンプにより外から補充
 - 食前・食後の血糖値や活動量に応じて調整が必要
・血糖自己測定(SMBG)または持続血糖測定(CGM)の活用
・食事療法:カーボカウント(炭水化物量に応じたインスリン調整)
・運動療法:低血糖のリスク管理を行いながら安全に行う

インスリン治療を中心に、日常生活における自己管理が重要な疾患です。

予後

1型糖尿病の予後は、インスリン療法による血糖管理の良否と合併症の予防・早期発見に左右されます。適切に管理されていれば、健康な人とほぼ同じ寿命を保つことができます。

良好な予後が期待できるケース

  • インスリン治療が継続的に行われている
  • 血糖自己測定やCGMによる適切な血糖コントロールができている
  • 低血糖・高血糖の管理ができており、重症化のリスクが低い
  • 定期的な合併症検査(眼底検査、腎機能検査など)を受けている

注意が必要なケース

  • 血糖値の急激な変動が頻回に起こる
  • 低血糖の自覚症状が乏しい場合(無自覚性低血糖)
  • 管理が不十分な状態が長期にわたる場合(網膜症、腎症、神経障害などが進行)

教育入院や医療チームの支援を受けながら、継続的な自己管理が求められます。

予防

現在のところ、1型糖尿病を確実に予防する方法は確立されていません。発症には遺伝や環境など複雑な要因が関与しており、生活習慣の改善では発症を防ぐことはできないとされています。

発症予防は困難

  • 生活習慣とは関係がなく、健康な子どもでも突然発症する
  • 自己免疫反応を抑える手段やワクチンなどの研究は進行中

早期発見の重要性

  • 家族に1型糖尿病患者がいる場合は、症状に注意
  • 頻尿、体重減少、倦怠感、口渇などの症状が現れた場合には早期受診を

研究中の予防的取り組み

  • リスクのある家族への抗体スクリーニング
  • 免疫療法などの臨床試験が世界各国で行われている

発症後の早期治療・管理が現時点では最善の予防とされます。

関連する病気や合併症

1型糖尿病は血糖の長期的な管理が不良な場合、全身の細い血管に障害を起こし、さまざまな合併症が進行します。また、自己免疫性疾患と関連が深いことも特徴です。

慢性合併症

  • 糖尿病網膜症:失明の原因となる可能性がある
  • 糖尿病腎症:腎不全に進行し、透析が必要となることもある
  • 糖尿病神経障害:しびれ、痛み、自律神経障害(低血圧、便秘など)
  • 動脈硬化症:心筋梗塞、脳梗塞のリスクが上昇

急性合併症

  • 糖尿病性ケトアシドーシス:インスリン欠乏により起こる、救急対応が必要
  • 重症低血糖:意識消失、けいれん、昏睡に至ることも

関連する自己免疫疾患

  • 橋本病(甲状腺機能低下症)
  • グレーブス病(甲状腺機能亢進症)
  • セリアック病(小麦アレルギーの一種)
  • アジソン病(副腎皮質機能低下症)

合併症を予防するためには、血糖の良好なコントロールと定期的な検査が不可欠です。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

日本糖尿病学会「1型糖尿病診療ガイドライン」(https://www.jds.or.jp/)

厚生労働省e-ヘルスネット「1型糖尿病」(https://kennet.mhlw.go.jp/home)

国立国際医療研究センター「1型糖尿病の理解と治療」(https://www.ncgm.go.jp/)

日本内分泌学会「自己免疫疾患と糖尿病」(https://www.j-endo.jp/)

■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。

「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。 医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。

  • 公開日:2025/07/16
  • 更新日:2025/07/16

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