空気嚥下症(呑気症)くうきえんげしょう
空気嚥下症(呑気症)は、無意識に多くの空気を飲み込んでしまうことで、げっぷや腹部膨満感、胃の不快感などを引き起こす病気です。ストレスや生活習慣が原因となることが多く、治療には行動療法や生活習慣の見直し、薬物療法が用いられます。命に関わる病気ではありませんが、慢性的な不快症状が生活の質を低下させるため、適切な対応が必要です。
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空気嚥下症(呑気症)とは?
空気嚥下症とは、食事中や日常生活の中で、無意識に空気を過剰に飲み込んでしまうことで、胃や腸にガスがたまり、さまざまな不快な症状を引き起こす状態です。「呑気症(どんきしょう)」とも呼ばれ、医学的には機能性消化管障害のひとつと考えられています。
通常、食事や会話の際には少量の空気が自然に飲み込まれますが、空気嚥下症ではこの量が過剰になり、げっぷや腹部膨満感、ガスの排出増加などの症状が現れます。
病気というよりは「習慣的・心理的要因」によって起こることが多く、ストレスや緊張、早食い、口呼吸、ガムや飴の頻繁な摂取、炭酸飲料の多飲などが関係しています。
命に関わることはありませんが、症状が続くことで精神的ストレスを増やし、さらに症状を悪化させる悪循環に陥ることもあります。
原因
空気嚥下症の原因は主に「行動習慣」と「心理的要因」の2つに大別されます。
行動習慣としては、早食い、食事中の会話、口呼吸、ストローの使用、ガムや飴の常習的な摂取、炭酸飲料の過剰摂取などが挙げられます。これらの行動によって空気が無意識に口から胃へと流れ込みやすくなります。
また、ストレス、不安、緊張といった心理的要因も重要です。強いストレスを受けているときには、呼吸が浅くなり、口呼吸になりやすくなったり、無意識に唾を飲み込む回数が増えることで、空気の摂取が増加する傾向があります。
職場や家庭の環境、精神的緊張を伴う生活習慣、会話が多い仕事なども影響を与えることがあります。
過敏性腸症候群(IBS)や機能性ディスペプシアと併発していることも多く、背景に消化管の運動機能異常や知覚過敏が関係している可能性も指摘されています。
症状
空気嚥下症で最も多くみられるのが「頻回のげっぷ」です。1日に何十回、あるいはそれ以上の回数でげっぷが出ることがあり、特に食後や会話の後、緊張時に増える傾向があります。
その他、「腹部膨満感」や「胃の張り」「おならの増加」「みぞおちの圧迫感」「吐き気」「食欲不振」「口や喉の違和感」などもよく見られる症状です。
げっぷや膨満感が慢性化すると、日常生活や仕事、食事に支障をきたし、精神的ストレスが増幅されることもあります。また、周囲への気遣いから会話を避けるようになるなど、社会生活に影響を及ぼす場合もあります。
夜間や安静時には症状が軽減することが多く、意識していないときには症状が出ないという特徴もあります。これは習慣や心理的緊張が大きく関与していることを示す所見です。
診断方法と治療方法
診断
診断は、まず問診によって症状の内容や頻度、生活習慣、ストレスの有無などを詳しく確認します。次に、他の消化器疾患(逆流性食道炎、胃潰瘍、胃がんなど)との鑑別のため、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)や腹部超音波、血液検査などが行われます。
これらの検査で器質的な異常が認められず、空気の嚥下が習慣化している場合には空気嚥下症と診断されます。
治療
治療の基本は「生活習慣の改善」と「行動療法」です。早食いや口呼吸、ガムの常用など、空気を飲み込む行動を減らすことが第一歩です。リラックスした食事環境、ゆっくり噛む習慣、炭酸やストローの回避も効果的です。
薬物療法としては、腸のガスを減らす消泡剤(ガスコンなど)、消化管運動調整薬、抗不安薬、漢方薬(半夏瀉心湯など)が用いられることもあります。
ストレスの強いケースでは、心療内科的アプローチや認知行動療法も有効です。
予後
空気嚥下症は、適切な生活習慣の見直しとストレス対策によって、症状をコントロールしやすい病気です。命に関わるような病態ではありませんが、症状が慢性化すると生活の質(QOL)が著しく低下することがあります。
多くの場合、治療開始後数週間から数ヶ月で症状が軽減しますが、再発することもあり、長期的な対応が必要になることもあります。
ストレスが強い状況が続くと、再びげっぷや胃の張りが出やすくなるため、生活環境の整備、精神的サポートが予後に大きく影響します。
また、薬物療法のみでなく、患者自身が自分の生活の中でどのような場面で症状が出やすいかを把握し、行動修正を意識することが予後改善に寄与します。
完全に治癒するというよりは、症状と付き合いながらコントロールしていくことを目指す治療スタンスが基本となります。
予防
空気嚥下症の予防には、空気を無意識に飲み込む行動を減らすための生活習慣の改善が中心になります。
早食いを避けてよく噛んでゆっくり食べる、ガムや飴の常用を控える、炭酸飲料やストローを避ける、食事中の会話を控えめにする、口呼吸を鼻呼吸に矯正するなどが有効です。
また、姿勢も関係しており、猫背や前かがみの姿勢は胃の圧迫を助長するため、食後は背筋を伸ばして過ごすことが推奨されます。
さらに、ストレスをためない、しっかりと睡眠を取る、深呼吸や軽い運動などでリラックスする時間を持つことも、無意識の空気嚥下を減らすのに効果があります。
生活上の小さな工夫とセルフケアの継続が、発症予防や再発防止につながります。症状が出始めた段階で早めに消化器内科に相談することも大切です。
関連する病気や合併症
空気嚥下症は、単独で発症することもありますが、他の機能性消化管疾患と合併することも少なくありません。代表的なものに「機能性ディスペプシア(FD)」「過敏性腸症候群(IBS)」があります。
また、慢性的なげっぷや腹部膨満感がストレスや不安を増幅させ、心因性の症状(不安障害、軽度のうつ症状)と連動することもあります。これは「身体表現性障害」や「心身症」として心療内科での診療対象になることもあります。
腹部の張りが強いと、食事量が減って栄養状態が悪化することもあり、長期的には体重減少や全身倦怠感につながることもあります。
また、過剰なげっぷや腹部不快感が気になりすぎて、社会的活動や人間関係を避けるようになることもあるため、身体的・心理的の両面からの対応が求められます。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
日本消化器病学会「機能性消化管障害の診療指針」(https://www.jsge.or.jp/)
国立国際医療研究センター「空気嚥下症と治療」(https://www.ncgm.go.jp/)
日本神経消化器病学会「機能性胃腸障害」(https://www.j-nm.org/)
■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。
「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。
医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。
医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。
- 公開日:2025/07/08
- 更新日:2025/07/09
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