変形性関節症へんけいせいかんせつしょう
変形性関節症は、関節の軟骨が加齢や過度な負荷によりすり減り、痛みや変形、機能障害を引き起こす疾患です。特に膝や股関節に多く、高齢者の運動機能低下の主因となります。早期発見と運動療法、薬物療法、重症例では手術が必要です。

変形性関節症とは?
変形性関節症(osteoarthritis:OA)とは、関節軟骨が加齢や繰り返しの負荷により徐々にすり減ることで、関節の変形や痛み、可動域の制限を引き起こす慢性の関節疾患です。関節軟骨の変性・摩耗だけでなく、関節周囲の骨、滑膜、靭帯、筋肉などの構造変化も関与する複合的な病態とされています。
最も好発する部位は膝関節であり、高齢女性に多く見られます。他にも股関節、脊椎、手指(ヘバーデン結節)、足の親指(母趾)などにも発生します。
軟骨が破壊されることで骨同士が直接接触するようになり、関節痛や腫れ、骨棘形成(骨のとげ)、関節の可動制限、最終的には明らかな変形に至ります。
日本では高齢化に伴い患者数が増加しており、要介護の主因の一つともなっています。変形性関節症は進行性の疾患ですが、早期発見と治療により進行を抑えることが可能です。
原因
変形性関節症の原因は大きく「一次性(特発性)」と「二次性」に分けられます。
■一次性(特発性)
明確な原因はなく、加齢に伴う関節軟骨の老化や、長年にわたる機械的ストレスの蓄積によって起こります。
以下のような要因が関与します。
・加齢
・性別(女性に多い)
・肥満(関節への負荷増大)
・遺伝的要素
・筋力低下、姿勢の乱れ、関節の不安定性
■二次性
外傷や炎症性疾患、先天異常、代謝性疾患など、明らかな原因があるものです。
・関節骨折や靭帯損傷などの外傷後の変性
・リウマチ、痛風など炎症性関節疾患による二次的変形
・先天性股関節脱臼などの解剖学的異常
・血友病、軟骨代謝異常などの稀な疾患
特に膝関節症では、内側荷重の増加やO脚変形が進行の大きな要因となります。多くの場合、複数の因子が重なり合って発症・進行するため、患者ごとに背景因子の評価が必要です。
症状
変形性関節症の症状は、初期には軽度の不快感やこわばりから始まり、進行すると運動時痛や安静時痛、関節の変形、可動域制限といった明確な障害が現れます。
■初期症状
・関節を動かし始めるときのこわばり(起床時や座位からの立ち上がり)
・軽い運動時の痛みや違和感
■進行すると
・運動時の関節痛が明確になる(歩行、階段昇降など)
・安静時にも痛みを感じるようになる
・関節の可動域制限(膝が曲がりにくい、伸びきらない)
・関節の腫れ、熱感、こすれる音(軋轢音)
・歩行困難や立ち上がり困難
■外見上の変化
・膝のO脚変形、股関節の外反変形
・手指のヘバーデン結節(DIP関節の腫れ)やブシャール結節(PIP関節)
・関節の変形による身長低下(脊椎の場合)
症状は進行性で、徐々に日常生活に支障をきたすようになります。活動量が減ると筋力低下や体重増加を招き、さらに関節に負担がかかるという悪循環に陥るため、早期の対処が重要です。
診断方法と治療方法
診断
1. 問診・身体所見
・痛みの場所、動作時の症状、既往歴、生活状況を確認
・可動域制限、関節腫脹、変形、軋轢音などを診察
2. 画像検査
・X線検査:軟骨下骨の狭小化、骨棘形成、骨硬化、骨嚢胞などの典型所見
・MRI:関節軟骨の損傷、滑膜の炎症、半月板損傷などを評価
・超音波:滑膜炎や関節液の貯留を視覚化
治療
1. 保存療法(初期〜中等度)
・運動療法:関節周囲の筋力を強化し、関節への負担を軽減(理学療法士指導のもと)
・減量:体重が減ることで膝関節への負荷が大幅に減る
・装具療法:足底板、膝サポーター、杖などで関節の安定化を図る
・薬物療法
- NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬):痛み・炎症を抑制
- アセトアミノフェン:高齢者でも比較的安全に使用可
- ヒアルロン酸注射:関節滑液の補充、潤滑作用
- サプリメント(グルコサミン、コンドロイチンなど)の効果は限定的
2. 手術療法(重症例)
・関節鏡視下手術:関節内のクリーニング
・骨切り術:荷重のかかり方を調整(若年・活動性高い症例向け)
・人工関節置換術(TKA/THA):高度変形や機能障害に対して非常に有効。現在では低侵襲手術も増加
手術の適応は症状の重さ、年齢、全身状態、患者の希望などを総合的に判断して決定されます。
予後
変形性関節症は進行性の疾患ですが、適切な治療と生活習慣の見直しによって進行を遅らせ、QOL(生活の質)を維持することが可能です。保存療法によって多くの患者は痛みの軽減や機能の改善が得られます。
中等度以上の症例でも、運動療法や薬物療法を組み合わせることで、手術を回避できる場合もあります。特に運動療法は、正しく継続することで症状改善に寄与します。
一方で、重症例では変形や可動域制限が不可逆的となり、手術が必要になります。人工関節置換術の成績は良好で、術後の痛みや可動域、歩行能力が大きく改善されるため、多くの患者が社会復帰・自立生活を取り戻しています。
予後を良好に保つには、継続的な治療と、痛みのあるときの安静・動けるときの運動のバランスが重要です。
予防
変形性関節症の予防には、関節への負担を減らす生活習慣の確立が重要です。
■体重管理
適正体重を維持することで、特に膝や股関節への負担を軽減できます。肥満は最大の危険因子のひとつです。
■運動習慣
過度な負荷は避けつつ、ウォーキング、水中運動、太極拳などの低負荷運動で関節の可動域を保ち、筋力を維持することが予防につながります。
■正しい姿勢と動作
座り方、立ち上がり、荷物の持ち上げ方など、日常動作を工夫することで関節の偏った負荷を回避できます。
■栄養管理
骨と筋肉の健康のために、カルシウム、ビタミンD、たんぱく質をしっかり摂取することも重要です。
日頃の習慣が、関節を守る大きな要素となります。
関連する病気や合併症
変形性関節症は単独で症状を呈するだけでなく、以下のような病気や合併症と関連することがあります。
■転倒・骨折
関節痛や可動域制限による歩行障害から、転倒のリスクが高まり、大腿骨骨折などの深刻な外傷に至ることがあります。
■サルコペニア・フレイル
活動量が減ることで筋力が低下し、さらに活動が制限される悪循環に陥ります。加齢による全身の虚弱と合併することが多いです。
■うつ病・不安障害
慢性疼痛やQOLの低下により、精神的な影響が現れることもあり、心身両面のケアが必要です。
■変形性脊椎症
腰痛や坐骨神経痛を伴う脊椎の変形も併発することがあり、膝や股関節との症状の区別が困難になることがあります。
■他の関節疾患との鑑別
関節リウマチ、痛風、偽痛風など炎症性関節炎との鑑別が重要であり、診断が遅れると予後に影響するため注意が必要です。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
日本整形外科学会「変形性関節症診療ガイドライン」(https://www.joa.or.jp/)
MSDマニュアル プロフェッショナル版「変形性関節症」(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional)
日本臨床整形外科学会「膝・股関節の変形性関節症」(https://www.jcoa.gr.jp/)
■ この記事を監修した医師

慶元 秀規医師 慶元整形外科リハビリ骨粗鬆症クリニック
近畿大学 医学部 卒
【医師経歴】
近畿大学医学部 卒業
大手前病院
堺市立総合医療センター
住友病院
大阪府立急性期・総合医療センター
大阪大学整形外科
刀根山医療センター
日本生命病院
おおさかグローバル整形外科病院
東住吉森本リハビリテーション病院
大阪大学整形外科の関連病院で一般整形、骨粗鬆症を中心にケガ・骨折や変形性関節症治療など幅広く携り、リハビリテーション病院にも勤務、リハビリテーションの重要性を学ぶ。
整形外科に来られる患者様の多くは「痛み」が原因。痛みを取ることで生活は大きく変わるため、どうすればこの痛みがとれて患者様が元気になれるのかを常に考え、それを実践することで皆様に元気で明るい日々を過ごしていただけるように医療を提供。
できるだけわかりやすくお話しするように心がけておりますので、何でもお気軽にご相談ください。
- 公開日:2025/07/02
- 更新日:2025/07/02
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