骨粗鬆症こつそしょうしょう
骨粗鬆症は、骨密度が低下し、骨がもろくなる疾患で、高齢者や閉経後の女性に多く見られます。骨折しやすくなり、寝たきりの原因にもなるため、早期の診断と予防的治療が重要です。適切な運動・栄養・薬物療法により進行を防ぐことができます。

骨粗鬆症とは?
骨粗鬆症とは、骨の強度が低下して骨折しやすくなる疾患であり、加齢や閉経などに伴って骨密度が減少し、骨の構造が脆弱化することで発症します。骨の強度とは、「骨密度」と「骨質」の両方で構成されており、どちらかが低下することで骨折リスクが高まります。
骨粗鬆症は、明らかな症状がないまま進行することが多く、背中や腰の痛み、身長の低下、背骨の圧迫骨折、手首・大腿骨などの骨折をきっかけに発見されることが多くあります。特に高齢者では骨折を契機に日常生活の自立を失い、寝たきりとなるリスクも高まります。
日本では、骨粗鬆症の患者は約1,000万人以上とされており、特に閉経後の女性に多く見られます。女性ホルモン(エストロゲン)の減少が骨の代謝に悪影響を及ぼすためです。
骨粗鬆症は、予防と早期診断・治療によって骨折を防ぎ、健康寿命を延ばすことが可能です。生活習慣の見直しとともに、適切な医療的介入が重要とされています。
原因
骨粗鬆症の原因は、原発性と続発性に大別されます。
■原発性骨粗鬆症
- 加齢:年齢とともに骨の吸収が進み、骨形成とのバランスが崩れます。
- 閉経:エストロゲンは骨吸収を抑える作用があり、閉経によってその作用が失われることで骨量が急激に減少します(閉経後骨粗鬆症)。
- 特発性:若年者でも原因不明で骨密度が低下することがあります。
■続発性骨粗鬆症
- 薬剤性:ステロイド薬の長期使用が最も有名です。抗てんかん薬、抗がん剤なども影響します。
- 内分泌疾患:甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能亢進症、糖尿病などが原因となることがあります。
- 消化器疾患:潰瘍性大腸炎やセリアック病などにより、栄養の吸収が障害されることで骨粗鬆症を引き起こすことがあります。
- 生活習慣:栄養不良、運動不足、過度のダイエット、喫煙、過度の飲酒なども骨代謝に悪影響を及ぼします。
また、家族歴がある人は遺伝的要素も影響するため、若年から予防を意識した生活が重要です。骨粗鬆症は多因子的な疾患であるため、リスク評価と原因の精査が治療の第一歩となります。
症状
骨粗鬆症は「沈黙の病気」と呼ばれるように、初期には自覚症状がほとんどありません。しかし、骨の強度が低下するにつれて、日常のちょっとした動作(転倒、咳、物を持ち上げた際)でも骨折するようになります。
■初期症状
- 自覚症状が乏しい
- 軽度の背中の痛みや違和感を感じることもある
■進行に伴う症状
- 圧迫骨折による背中や腰の慢性的な痛み
- 身長の低下(年間1cm以上の低下は注意)
- 猫背(円背)や姿勢の崩れ
- 胸の圧迫感、胃の圧迫による食欲低下
■骨折により発症することの多い部位
- 胸腰椎の圧迫骨折(最も頻度が高い)
- 大腿骨近位部骨折(転倒によって生じ、要介護の原因に)
- 橈骨遠位端骨折(手をついたときの骨折)
骨折は一度起こると、再骨折のリスクが大きく高まります。特に背骨の骨折を起こした場合は、次の骨折が短期間で起こりやすくなるため、「骨折の連鎖」と呼ばれています。
また、骨折によって痛みや移動の困難さが生じることで、活動量が低下し、筋力も落ち、さらなる骨量減少につながるという悪循環に陥るリスクがあります。
診断方法と治療方法
診断
1. 問診・身体所見
・身長の変化、家族歴、既往歴、骨折歴、食事や運動習慣を確認
・圧迫骨折の疑いがある場合は背骨の叩打痛や姿勢の変化も観察
2. 骨密度検査(DXA法)
・最も信頼性の高い検査で、腰椎と大腿骨を測定する
・YAM(若年成人平均値)の70%未満で骨粗鬆症と診断される
3. X線検査
・圧迫骨折や骨変形の評価に有効。骨折の既往がある場合は要注意
4. 血液・尿検査
・カルシウム、ビタミンD、骨代謝マーカー(TRACP5b、BAPなど)
・二次性骨粗鬆症のスクリーニング(甲状腺、副甲状腺、腎機能など)
治療
1. 薬物療法
・ビスホスホネート製剤:骨吸収を抑制(第一選択薬)
・デノスマブ:RANKL阻害薬。半年に1回の皮下注射
・活性型ビタミンD:カルシウム吸収促進
・選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM):閉経後女性に使用
・テリパラチド(副甲状腺ホルモン製剤):骨形成促進。重症例に使用
・ロモソズマブ:新しい骨形成促進薬。高リスク患者向け
2. 非薬物療法
・栄養指導:カルシウム(700~800mg/日)、ビタミンD(10~20μg/日)、たんぱく質の摂取
・運動療法:負荷をかけた運動(ウォーキング、筋トレ)が骨形成を促進
・転倒予防:家庭内環境の見直し、バリアフリー対策、歩行補助具の使用
治療効果は骨密度測定や骨代謝マーカーで評価され、治療開始から1~2年ごとのフォローが推奨されます。
予後
骨粗鬆症自体は生命を脅かす病気ではありませんが、骨折によって生活の質(QOL)が大きく損なわれ、要介護や死亡リスクが増加します。特に大腿骨近位部骨折を起こした高齢者では、半年以内に約1割が死亡するという報告もあります。
一度骨折すると再骨折のリスクが高くなるため、初回骨折の予防と、骨折後の早期治療介入が重要です。治療を継続することで、骨密度の維持や改善が可能となり、骨折リスクを下げることができます。
ビスホスホネートやデノスマブといった薬剤は、長期使用によって骨密度の維持効果が示されており、適切に使えば予後を良好に保つことができます。副作用や治療中断によるリスクもあるため、医師との相談のもとで治療を継続することが重要です。
予防
骨粗鬆症の予防には、若い頃からの骨の健康を意識した生活が鍵となります。以下の要素が重要です。
■食生活
・カルシウム(乳製品、小魚、野菜など)を毎日摂取
・ビタミンD(魚、きのこ類、日光浴)を十分に
・ビタミンK(納豆、緑黄色野菜)も骨代謝に関与
・過度な塩分やカフェイン、アルコールの摂取は控える
■運動習慣
・ウォーキングや階段昇降、筋トレなど骨に刺激を与える運動を週3回以上実施
・転倒予防のためのバランストレーニングも有効
■生活環境
・室内の段差、滑りやすい床などを改修
・視力矯正や歩行補助具の使用も転倒リスクを減らす
骨量は20〜30代でピークに達するため、若年期の骨量の蓄積が高齢期の骨粗鬆症予防に直結します。
関連する病気や合併症
骨粗鬆症によって引き起こされる最も重大な合併症は「骨折」です。特に以下の3か所は「骨粗鬆症性骨折」の好発部位です。
■脊椎圧迫骨折
・背中や腰の痛み、身長低下、円背の原因に
・複数回起こると肺や消化器が圧迫され、呼吸・食事にも影響
■大腿骨近位部骨折
・転倒をきっかけに起こりやすく、高齢者では要介護の主因
・手術や長期入院が必要となることが多い
■橈骨遠位端骨折
・手をついたときに起こりやすく、骨粗鬆症の初発骨折として多い
これらの骨折は再発リスクが高く、心理的な萎縮や活動性の低下を引き起こします。また、骨折後の寝たきりによる廃用症候群、褥瘡、肺炎、うつ症状なども重要な合併症であり、QOLと寿命に影響します。
他にも、骨粗鬆症は脊椎変形による神経圧迫(脊柱管狭窄症)、難治性腰痛などとも関連が深く、整形外科やリハビリ科との連携が求められます。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
クラウドドクターの
オンライン診療
クラウドドクターのオンライン診療
クラウドドクターでは、問診内容を元に全国から適したドクターがマッチングされ、あなたの診療を行います。診療からお薬の処方までビデオ通話で受けられるため、お忙しい方にもおすすめです。
-
いつでも診療OK
24時間365日 -
ご利用可能
保険診療が -
お薬の受取り可能
お近くの薬局やご自宅で
■ 参考・出典
日本骨粗鬆症学会「骨粗鬆症診療ガイドライン」(https://www.josteo.com/)
MSDマニュアル プロフェッショナル版「骨粗鬆症」(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional)
厚生労働省 e-ヘルスネット「骨粗鬆症」(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/)
■ この記事を監修した医師

慶元 秀規医師 慶元整形外科リハビリ骨粗鬆症クリニック
近畿大学 医学部 卒
【医師経歴】
近畿大学医学部 卒業
大手前病院
堺市立総合医療センター
住友病院
大阪府立急性期・総合医療センター
大阪大学整形外科
刀根山医療センター
日本生命病院
おおさかグローバル整形外科病院
東住吉森本リハビリテーション病院
大阪大学整形外科の関連病院で一般整形、骨粗鬆症を中心にケガ・骨折や変形性関節症治療など幅広く携り、リハビリテーション病院にも勤務、リハビリテーションの重要性を学ぶ。
整形外科に来られる患者様の多くは「痛み」が原因。痛みを取ることで生活は大きく変わるため、どうすればこの痛みがとれて患者様が元気になれるのかを常に考え、それを実践することで皆様に元気で明るい日々を過ごしていただけるように医療を提供。
できるだけわかりやすくお話しするように心がけておりますので、何でもお気軽にご相談ください。
- 公開日:2025/07/02
- 更新日:2025/07/02
クラウドドクターは24時間365日対応
現在の待ち時間
約3分