気管支喘息きかんしぜんそく
気管支喘息は、気道の慢性的な炎症によって咳や呼吸困難を引き起こす病気です。吸入薬を中心とした治療で多くはコントロール可能で、早期の対応が重要です。
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気管支喘息とは?
気管支喘息とは、気道(気管支)に慢性的な炎症が起きることで、咳、喘鳴(ぜんめい)、呼吸困難などを繰り返す病気です。気道が炎症により過敏になり、わずかな刺激でも収縮しやすくなっており、この状態を「気道過敏性」と呼びます。
症状は夜間や明け方に強くなる傾向があり、運動や冷気、花粉、ハウスダストなどの環境因子、風邪などの感染症、ストレスも発作の引き金になります。一時的に症状が落ち着くこともありますが、慢性的な病気であり、完治は約10%と言われておりますが、昨今は継続的なコントロールにて臨床的寛解も多く認められております(治癒することはまれです。)
喘息は小児に多く発症しますが、成人や高齢者でも新たに発症することがあり、高齢発症の喘息が問題視されております。適切な治療により症状をコントロールし、発作を予防することが可能で、生活の質(QOL)を高く保つためには継続的な管理が重要です。
原因
気管支喘息の原因は明確に1つに限定されるわけではなく、遺伝的な体質と環境因子が複雑に関与しています。家族に喘息やアレルギー疾患がある場合、喘息を発症しやすい傾向があります。
アレルギー性喘息では、ダニ、ハウスダスト、花粉、ペットの毛やフケなどが気道の炎症を引き起こす原因(アレルゲン)となります。一方、非アレルギー性喘息では、感染症、運動、冷気、ストレス、薬剤(アスピリンなど)などが誘因になります。
気道内に持続的な炎症が存在することで、気道が肥厚し、過敏になり、咳や喘鳴を引き起こしやすくなります。こうした炎症の持続が喘息の本質であり、症状がないときも気道の炎症が進行している可能性があるため、日常的な治療が欠かせません。
症状
気管支喘息の症状は、主に咳、喘鳴(ゼーゼー・ヒューヒューという音)、息切れ、呼吸困難です。咳は乾いた咳であることが多く、夜間や明け方に特に強くなる傾向があります。運動後や風邪の回復期に咳だけが残るケースもあります。
喘息の発作時には、気道の平滑筋が収縮し、粘膜が腫れ、粘液が過剰に分泌されます。その結果、空気の通り道が狭くなり、呼吸が困難になります。これが喘鳴や息切れの原因であり、胸の圧迫感や息苦しさとして自覚されます。
気道の慢性炎症は、長期間放置すると気道の構造そのものに変化(リモデリング)を引き起こし、症状の悪化や治療抵抗性を高めます。そのため、症状が軽い場合でも炎症を抑える治療が必要です。
発作は数分から数時間続くことがあり、重度になると酸素不足から意識障害や呼吸停止を引き起こすことがあります。特に夜間の発作は見過ごされやすく、早期の受診と継続的な治療が重要です。
診断方法と治療方法
診断
診断には、問診と診察を中心に、肺機能検査(スパイロメトリー)、呼気NO測定、ピークフローメーターによる日内変動の記録などが行われます。呼吸機能検査では、1秒量(FEV1)や1秒率の低下がみられることがあります。これらは気道の狭窄状態を客観的に評価するために用いられます。
アレルゲンの特定には血液検査(IgE抗体測定)や皮膚テストが行われます。特にアレルギー性喘息では、原因物質の除去や回避が症状改善のカギとなります。
治療
治療の中心は吸入ステロイド薬(ICS)で、気道の炎症を抑える最も基本的な薬剤です。これに加えて、気管支拡張薬(LABA)、ロイコトリエン受容体拮抗薬、テオフィリンなどが用いられます。発作時には短時間作用型β2刺激薬(SABA)の吸入で対処します。
近年では、生物学的製剤(抗IL-5抗体や抗IgE抗体)による治療も導入されており、重症例に対しては有効な選択肢となっています。定期的な受診と薬の継続使用により、多くの患者で良好なコントロールが得られます。
予後
気管支喘息は完治が難しい慢性疾患ですが、治療を継続することで発作を抑え、日常生活に支障のない状態を保つことが可能です。特に軽症から中等症の患者では、適切な吸入治療と自己管理によって長期的に安定した経過をたどることが期待されます。
一方、治療を中断したり、発作を繰り返すことで気道のリモデリングが進行し、慢性的な気流制限が固定化すると、治療効果が得られにくくなります。これがいわゆる「コントロール不良喘息」と呼ばれる状態です。
重症喘息では生命に関わる発作もあり、救急搬送や入院が必要になることもあります。早期診断と継続的な管理が予後を左右するため、症状が軽くても治療を中断しないことが重要です。
予防
気管支喘息の予防には、発作の引き金となる要因を把握し、回避することが大切です。アレルゲンが原因であれば、ダニ対策としての寝具の管理、空気清浄機の使用、ペットとの距離を保つなどの工夫が有効です。
また、風邪などの呼吸器感染症が発作を引き起こすため、マスク着用や手洗い、インフルエンザワクチンの接種などで予防を徹底することが望まれます。寒冷刺激や強い運動後の発作が多い方は、ウォーミングアップやマスクによる吸気温度の調整が助けになります。
加えて、薬の中断や自己判断による治療の変更は避け、医師の指導のもとで治療を継続することが予防の基本です。吸入薬の使用技術を定期的に見直すことも効果的な発作予防につながります。
関連する病気や合併症
気管支喘息に関連する病気として、咳喘息、好酸球性副鼻腔炎、アスピリン喘息、アトピー咳嗽などが挙げられます。
咳喘息は喘鳴や息切れを伴わない咳のみの喘息で、約30%が通常の喘息へ移行することもあるため早期の治療介入が重要です。
好酸球性副鼻腔炎は鼻ポリープや鼻づまりを伴う慢性副鼻腔炎で、喘息患者に高頻度に併発します。好酸球性副鼻腔炎の治療で喘息コントロールが良くなる場合が多くあり、喘息がある方で副鼻腔炎の症状があれば耳鼻科との連携が必要になります。
アスピリン喘息はNSAIDs(解熱鎮痛薬)により誘発される喘息で、重症化する例もあります。
また、重症喘息患者では慢性的な低酸素状態から心肺機能に影響を及ぼすこともあり、COPDとの鑑別や併存が重要です。これらの合併症は治療の選択肢や経過に影響するため、定期的な診察と多職種連携が必要です。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「気管支喘息」(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-009.html)
■ この記事を監修した医師

石井 誠剛医師 イシイ内科クリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒後、済生会茨木病院で研修を行い、日本生命病院で救急診療科、総合内科勤務。
その後、近畿中央呼吸器センターで勤務後、西宮市立中央病院呼吸器内科で副医長として勤務。
イシイ内科クリニックを開設し、地域に密着し、 患者様の気持ちに寄り添った医療を提供。
日本生命病院では総合内科医として様々な内科診療に携わり、近畿中央呼吸器センターでは呼吸器の専門的な治療に従事し、 西宮市立中央病院では呼吸器内科副医長として、地域医療に貢献。
抗加齢学会専門医として、アンチエイジングだけを推し進めるのではなく、適切な生活指導と内科的治療でウェルエイジングを提供していくことを目指している。
- 公開日:2025/07/08
- 更新日:2025/07/10
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