クラミジア肺炎くらみじあはいえん
クラミジア肺炎は、Chlamydophila pneumoniae によって引き起こされる非定型肺炎で、乾いた咳や微熱などが持続するのが特徴です。若年層に多く、重症化はまれですが、自然治癒しにくいため抗菌薬治療が必要です。診断にはPCR検査などが用いられます。
9.jpg)
クラミジア肺炎とは?
クラミジア肺炎とは、Chlamydophila pneumoniae(クラミドフィラ・ニューモニエ)という細菌によって引き起こされる呼吸器感染症で、非定型肺炎の一つに分類されます。かぜのような症状から始まり、乾いた咳が長引くのが典型的な特徴です。
クラミジア肺炎は、細菌性肺炎とは異なり、急激な高熱や重い症状を呈することは少なく、比較的軽度に経過することが多いですが、自然治癒しにくく、長期間にわたる症状が続くこともあります。重症化はまれですが、免疫力が低下している人や高齢者では注意が必要です。
若年層に多く、学校や職場などの集団生活の場での流行が報告されています。飛沫感染により広がるため、感染予防には基本的な手洗い・マスクの着用が推奨されます。
診断には血清抗体検査やPCR検査が用いられ、治療にはマクロライド系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系などの抗菌薬が使用されます。早期の治療によって症状の改善が期待されますが、咳が長く続くことがあるため注意が必要です。
原因
クラミジア肺炎の原因は、Chlamydophila pneumoniae というグラム陰性の細胞内寄生性の細菌による感染です。この菌は一般的な細菌とは異なり、細胞内でしか増殖できないという特徴を持ちます。そのため、培養が難しく診断が困難なこともあります。
感染経路
- 飛沫感染(感染者の咳やくしゃみに含まれる飛沫)
- 潜伏期間は1〜3週間程度とされ、比較的長い
好発年齢
- 10歳以降の小児〜若年成人に多く見られる
- 成人以降も繰り返し感染が可能であり、成人の市中肺炎の5〜10%を占めるとされている
感染の特徴
- 比較的ゆっくりと症状が進行する
- 症状が軽いため、かぜや気管支炎と誤認されやすい
- 感染しても軽症で済むことが多く、本人が気づかないうちに他人へ感染を広げる可能性がある
クラミジア肺炎は、他の非定型肺炎(マイコプラズマ肺炎など)と似た症状を示しますが、発熱が軽く、乾いた咳が主症状である点が特徴です。また、気管支喘息の悪化要因になることが知られており、慢性呼吸器症状がある患者では注意が必要です。
症状
クラミジア肺炎の症状は、風邪に似た軽い上気道症状から始まり、徐々に乾いた咳が強くなるのが特徴です。以下に典型的な症状を挙げます。
初期症状
- のどの痛み
- 鼻づまり、くしゃみ
- 微熱(37〜38℃前後)
- 頭痛、筋肉痛、倦怠感
主な呼吸器症状
- 声のかすれ(嗄声)
- 食欲不振
- 悪寒を伴わない熱感
- 発疹や関節痛などの全身症状
高齢者や免疫低下者が感染した場合
- 典型的な症状が乏しい場合がある
- 全身に倦怠感、呼吸状態の悪化、持続する微熱などに注意
合併しうる症状
- 副鼻腔炎、中耳炎
- 喘息の悪化(喘息持ちの人では誘因になることがある)
- まれに心筋炎や神経症状が報告されている
クラミジア肺炎の症状はマイコプラズマ肺炎と非常に似ており、鑑別が難しいことがあります。症状が長引く、他の原因が見つからないといった場合には、医師による専門的な検査と診断が必要です。
診断方法と治療方法
診断
- 問診と身体診察
・症状の経過(乾いた咳が2週間以上続いているか)
・周囲に似た症状の人がいるか、流行状況なども確認 - 胸部X線検査
・肺にびまん性の浸潤影が見られることが多い
・片側性の小葉性浸潤や、間質性陰影などが特徴的 - 血液検査
・白血球数は正常〜やや上昇
・CRPは軽度〜中等度上昇
・一般細菌性肺炎ほど強い炎症所見は出にくい - 抗体検査
・ペア血清検査(急性期と回復期で抗体価の4倍以上の上昇を確認)
・IgM抗体の測定(急性感染の指標) - PCR検査(核酸増幅検査)
・咽頭ぬぐい液や喀痰から病原体のDNAを検出
・感度・特異度ともに高く、迅速な診断が可能
治療
- 抗菌薬治療
・マクロライド系(アジスロマイシン、クラリスロマイシン):第一選択薬
・テトラサイクリン系(ドキシサイクリン):成人では効果的
・ニューキノロン系(レボフロキサシン):耐性や再発例に使用される
※ペニシリン系、セフェム系などのβラクタム系は効果がないため注意 - 対症療法
・咳止め、解熱鎮痛薬、去痰薬などを症状に応じて使用
・水分摂取と安静を保つ - 入院治療の適応
・呼吸困難がある、脱水が強い、基礎疾患の悪化がある場合
・高齢者や免疫抑制状態の患者では入院管理が望ましい
早期の診断と適切な抗菌薬治療により、通常は数日〜1週間で症状は軽快しますが、咳が長引くことがあるため注意が必要です。
予後
クラミジア肺炎は、適切な治療を受ければ予後良好な疾患です。特に若年層では重症化することはまれであり、抗菌薬の服用により多くは1週間以内に症状の改善がみられます。
良好な予後の例
- マクロライド感受性菌による感染
- 基礎疾患のない若年者
- 治療の開始が早い場合
注意が必要なケース
- 高齢者や免疫抑制状態の人
- 喘息など慢性呼吸器疾患を持つ人では、症状が遷延することがある
- 抗菌薬の服用を自己判断で中断した場合、再燃の可能性がある
後遺症
- ごくまれに気管支拡張症や慢性咳嗽が残ることがある
- 他の感染症や合併症による影響を受けることもある
完治までには個人差があるため、症状の変化に注意しながら治療を継続することが重要です。
予防
クラミジア肺炎に対するワクチンは存在しないため、日常生活における感染予防が最も有効な手段となります。
予防の基本
- 手洗い、うがいを徹底する
- 咳エチケットを守る(マスクの着用、咳時は肘で口を覆うなど)
- 発熱や咳のある人との接触を避ける
集団生活での対策
- 教室、職場、寮などでは定期的に換気を行う
- 感染が疑われる場合には無理に登校・出勤せず、早めに医療機関を受診する
免疫力を保つために
- バランスのとれた食事、十分な睡眠、適度な運動を心がける
- 過度なストレスを避け、体調管理を徹底する
再感染予防
- 感染後もしばらくは咳が続くことがあるため、他人への感染防止に注意する
- 抗菌薬は医師の指示どおりに服用を続ける
基本的な感染対策を継続することで、クラミジア肺炎の発症や拡大を防ぐことができます。
関連する病気や合併症
クラミジア肺炎は比較的軽症で済むことが多いですが、以下のような疾患との関連や合併症が知られています。
呼吸器疾患との関連
- 気管支喘息の増悪因子になることがある
- 慢性咳嗽(咳が1か月以上続く):感染後の気道過敏により遷延することがある
- 気管支炎、副鼻腔炎、中耳炎を合併することもある
まれな全身性合併症
- 皮膚症状(紅斑、多形紅斑など)
- 関節炎(反応性関節炎)
- 心筋炎、心膜炎
- 神経合併症(末梢神経炎など)
他の感染症との鑑別が必要な疾患
- マイコプラズマ肺炎、インフルエンザ肺炎、COVID-19
- 一般的な細菌性肺炎(肺炎球菌、インフルエンザ菌)
- 薬剤性肺炎やアレルギー性肺疾患
これらとの鑑別をしっかり行い、適切な治療と管理を行うことが重症化や再発の予防につながります。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
クラウドドクターの
オンライン診療
クラウドドクターのオンライン診療
クラウドドクターでは、問診内容を元に全国から適したドクターがマッチングされ、あなたの診療を行います。診療からお薬の処方までビデオ通話で受けられるため、お忙しい方にもおすすめです。
-
いつでも診療OK
24時間365日 -
ご利用可能
保険診療が -
お薬の受取り可能
お近くの薬局やご自宅で
■ 参考・出典
- 国立感染症研究所「クラミジア肺炎とは」(https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/523-chlamydia-intro.html)
- MSDマニュアル プロフェッショナル版「クラミジア肺炎」(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional)
- 日本呼吸器学会「呼吸器感染症診療ガイドライン」(https://www.jrs.or.jp/)
■ この記事を監修した医師

石井 誠剛医師 イシイ内科クリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒後、済生会茨木病院で研修を行い、日本生命病院で救急診療科、総合内科勤務。
その後、近畿中央呼吸器センターで勤務後、西宮市立中央病院呼吸器内科で副医長として勤務。
イシイ内科クリニックを開設し、地域に密着し、 患者様の気持ちに寄り添った医療を提供。
日本生命病院では総合内科医として様々な内科診療に携わり、近畿中央呼吸器センターでは呼吸器の専門的な治療に従事し、 西宮市立中央病院では呼吸器内科副医長として、地域医療に貢献。
抗加齢学会専門医として、アンチエイジングだけを推し進めるのではなく、適切な生活指導と内科的治療でウェルエイジングを提供していくことを目指している。
- 公開日:2025/07/16
- 更新日:2025/07/16
クラウドドクターは24時間365日対応
現在の待ち時間
約3分