扁桃炎へんとうえん

扁桃炎は、のどの奥にある扁桃に炎症が起きる病気で、のどの強い痛みや発熱、嚥下障害を引き起こします。急性と慢性に分類され、溶連菌などの細菌感染が主な原因です。治療は抗菌薬が中心で、繰り返す場合は扁桃摘出手術が行われることもあります。

扁桃炎とは?

扁桃炎とは、咽頭の奥にある「口蓋扁桃(こうがいへんとう)」に炎症が起きる疾患です。口蓋扁桃は免疫機能の一部を担うリンパ組織であり、細菌やウイルスの侵入に対して最前線で働いていますが、感染が起きると腫れて痛みを生じます。
扁桃炎は大きく分けて「急性扁桃炎」と「慢性扁桃炎」に分類されます。急性扁桃炎は突然の発熱やのどの強い痛みを特徴とし、特に若年成人に多くみられます。慢性扁桃炎は炎症が繰り返し起こる状態で、年に数回以上の発症を繰り返すことが特徴です。
原因の多くはウイルスや細菌で、特に溶血性連鎖球菌(溶連菌)によるものが代表的です。扁桃炎は風邪の一症状としてもみられますが、高熱と強い嚥下痛がある場合は扁桃炎の可能性が高くなります。
抗菌薬や消炎鎮痛薬などの内科的治療で改善しますが、繰り返す場合や合併症を伴う場合には外科的に扁桃を摘出することも検討されます。

扁桃炎の原因

扁桃炎は主にウイルスや細菌の感染によって引き起こされます。健康な状態でも口腔内には多数の菌が常在していますが、疲労やストレス、睡眠不足などで免疫力が低下すると、扁桃が感染にさらされやすくなります。

急性扁桃炎の原因

  • ウイルス:風邪のウイルス(ライノウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルスなど)
  • 細菌:A群溶血性連鎖球菌(溶連菌)、肺炎球菌、ブドウ球菌など

慢性扁桃炎の原因

  • 急性扁桃炎を繰り返すことで慢性化
  • 膿栓(扁桃にたまった膿のかけら)が炎症の慢性化に関与
  • 口腔内の清掃不良、喫煙、慢性的な咽頭刺激
  • 副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などの鼻疾患が関与することもある

慢性扁桃炎を起こすリスク因子

  • 疲労、過労、睡眠不足、冷え
  • 免疫力の低下
  • ストレス
  • 飲酒や喫煙

特に溶連菌による扁桃炎は、高熱と強いのどの痛みを特徴とし、小児から成人にかけて幅広くみられます。また、まれに扁桃周囲膿瘍へと進行し、入院加療が必要になるケースもあります。

扁桃炎の症状は?

扁桃炎の症状は、炎症の程度や病型によって異なりますが、最も特徴的なのは「のどの強い痛み」と「発熱」です。

急性扁桃炎の症状

  • のどの痛み(嚥下痛):食事や唾液を飲み込むのも困難になるほど強い
  • 発熱:38〜40度の高熱を伴うことが多い
  • 倦怠感、寒気、頭痛
  • 頸部リンパ節の腫れと痛み
  • 耳への放散痛:耳が痛く感じることもあります

のどの所見

  • 赤く腫れた扁桃
  • 白苔や膿が付着(とくに細菌性の場合)
  • 口を開けると左右の扁桃が大きく腫れて、咽頭が狭く見える

慢性扁桃炎の症状

  • のどの違和感や軽い痛みを繰り返す
  • 発熱は軽度または無い
  • 風邪をひくたびにのどの腫れを伴う

小児における症状

  • 急な高熱で始まることが多く、機嫌が悪い、ぐったりしているなどが初発症状となる
  • 「耳が痛い」と訴える場合、中耳炎を合併していることもあります

症状が強い場合や、発熱が3日以上続く場合、のどの痛みがどんどん悪化する場合などは、扁桃周囲膿瘍などの重症化を疑い、速やかな受診が必要です。

 

扁桃炎の診断方法と治療方法

診断

  1. 問診
    症状の出現時期、発熱の有無、嚥下痛、倦怠感の程度、過去の繰り返しの有無などを確認します。
  2. 視診(口腔・咽頭診察)
    ・扁桃の腫脹、発赤、白苔や膿栓の有無を観察
    ・扁桃周囲に腫れや膿瘍の形成がないかを確認
  3. 触診
    頸部リンパ節の腫れや圧痛の確認
  4. 検査
    ・咽頭ぬぐい液での迅速溶連菌検査(5分程度で判定)
    ・血液検査:白血球増加、CRP上昇など炎症反応の評価
    ・膿瘍が疑われる場合はCTを行うこともあります

治療

  1. 薬物療法
    ・抗菌薬:細菌性(特に溶連菌)と判断される場合はペニシリン系(アモキシシリンなど)を中心に使用
    ・解熱鎮痛薬:アセトアミノフェン、イブプロフェンなどで痛みと発熱を抑える
    ・うがい薬:炎症部位の洗浄と殺菌に有効
    ・トローチやのどスプレーなどの補助的な治療もあります
  2. 入院治療が必要な場合
    高熱が続く、水分が取れない、呼吸困難、扁桃周囲膿瘍の疑いがある場合には入院のうえ点滴抗菌薬や切開排膿が必要
  3. 慢性扁桃炎への対応
    ・年に3回以上の急性扁桃炎を繰り返す場合や、扁桃炎によって腎炎などの合併症を引き起こす場合には「扁桃摘出術」が検討されます
    ・扁桃摘出術は全身麻酔下で行われ、1週間程度の入院が一般的

治療中は水分補給と安静が重要です。抗菌薬は処方通りに飲みきることが、再発予防にもつながります。

扁桃炎の予後について

急性扁桃炎の予後は一般に良好で、適切な抗菌薬治療を受ければ3〜5日で症状は軽快します。発熱や痛みは1週間以内に消失し、後遺症を残すことはほとんどありません。
しかし、以下のような場合には注意が必要です

  • 抗菌薬を途中で中止した場合
  • 免疫力の低下している人(糖尿病、がん治療中など)
  • 慢性化している場合

繰り返す急性扁桃炎は「慢性扁桃炎」とされ、年に3回以上発症するようであれば、日常生活への影響も考慮し、手術(扁桃摘出術)を検討することがあります。
まれに、A群溶連菌による扁桃炎が急性糸球体腎炎やリウマチ熱などの全身性合併症を引き起こすことがあるため、確実な治療が重要です。
適切な治療と生活管理によって再発リスクを抑え、健康な状態を維持することが可能です。

扁桃炎の予防について

扁桃炎の予防には、日常生活の中で免疫力を維持し、のどへの刺激を減らすことが重要です。

日常生活での対策

  • うがい・手洗いの習慣化(特に外出後)
  • 室内の加湿(湿度50〜60%を目安に)
  • 十分な睡眠と栄養
  • のどを乾燥させないよう、こまめに水分補給
  • 喫煙を控える(のどの粘膜を傷つけ、炎症を悪化させる)
  • 過労やストレスを避ける

風邪をひいたときの注意

  • のどの痛みがある場合は早めに受診
  • 高熱や強い痛みがあるときは自己判断せず医師に相談する

口腔内の清潔

  • 虫歯や歯周病は炎症のリスクを高めるため、定期的な歯科受診も重要です

再発しやすい人は、症状が出たときに早期対応することで重症化を防げます。慢性扁桃炎が疑われる場合は、専門医への相談をおすすめします。

扁桃炎が関連する病気や合併症

扁桃炎が引き起こす可能性のある合併症や関連疾患には以下のようなものがあります。

局所合併症

  • 扁桃周囲膿瘍:扁桃周囲に膿がたまることで、のどの腫れや激痛、開口障害、発熱を伴う。切開排膿が必要になることもある
  • 急性中耳炎:耳管を介して炎症が耳に波及

全身性合併症(特に溶連菌感染が原因の場合)

  • 急性糸球体腎炎:感染後2〜3週間で発症することがある。血尿、むくみ、高血圧など
  • リウマチ熱:心臓、関節、中枢神経系に炎症を起こすことがある
  • 扁桃病巣感染症:皮膚炎、関節炎、掌蹠膿疱症などを誘発

これらの合併症を防ぐためには、扁桃炎の適切な治療と再発予防の管理が不可欠です。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「扁桃炎診療ガイドライン」(https://www.jibika.or.jp/)

MSDマニュアル プロフェッショナル版「扁桃炎」(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional)

厚生労働省 e-ヘルスネット「扁桃炎」(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/)

■ この記事を監修した医師

岩野 圭佑医師 西梅田シティクリニック

大阪大学 医学部 卒

東京大学教養学部イギリス科卒業後、株式会社DeNAで新卒採用業務、Terramotors株式会社で営業・広報・採用業務に従事。
大阪大学医学部医学科に学士編入し卒業後、兵庫県立西宮病院で初期研修を修了。
大阪市立総合医療センター、大阪大学医学部附属病院にて耳鼻咽喉科・頭頸部外科医として研修した後、大手美容内科に転職し院長として勤務。
令和7年1月、兵庫県芦屋市に『芦屋駅前皮フ科ビューティクリニック』を開設。

患者様を第一に考え、一般皮膚科・美容皮膚科のクリニックを経営するとともに、大手美容内科の院長として長年の経験を蓄積。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医時代には悪性腫瘍の手術や病棟管理を数多く担当し、現在も非常勤で救命救急科医師として医療現場で勤務。
医療機関の開業支援やM&A仲介、人材紹介といった医療ビジネスにも積極的に取り組み、医療の質とアクセス向上を目指している。

  • 公開日:2025/06/13
  • 更新日:2025/06/13

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