リンパ球性間質性肺炎りんぱきゅうせいかんしつせいはいえん
リンパ球性間質性肺炎(LIP)は、肺間質にリンパ球が浸潤し線維化を引き起こすまれな間質性肺疾患で、膠原病や免疫疾患と関連することが多いです。進行は緩徐で、治療にはステロイドや免疫抑制薬が用いられます。早期診断と長期的管理が重要です。
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リンパ球性間質性肺炎とは?
リンパ球性間質性肺炎(Lymphoid Interstitial Pneumonia:LIP)は、肺の間質に主にリンパ球や形質細胞が浸潤し、びまん性に炎症や線維化を引き起こすまれな間質性肺疾患です。特発性間質性肺炎(IIP)の一病型であり、成人よりも小児に多く報告されることがありますが、成人例も一定数存在します。
LIPは単独で発症することもありますが、多くは自己免疫疾患(特にシェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス)やHIV感染、その他の免疫不全状態に合併して発症します。中年女性に多く、比較的緩徐な進行を示すことが一般的です。
病態としては、リンパ球が肺の間質や小葉間隔壁に広く浸潤し、さらにリンパ濾胞の形成や細気管支周囲の炎症を伴うことで、肺の構造が徐々に破壊されていきます。進行するとガス交換能力が低下し、慢性的な呼吸不全へと移行します。
治療にはステロイド薬や免疫抑制薬が使用されますが、再発しやすく、まれに悪性リンパ腫へと進展する例も報告されています。
原因
LIPは原因不明の特発性疾患として発症することもありますが、多くは何らかの基礎疾患に関連して発症します。以下に主な関連因子を挙げます。
関連する疾患
- 自己免疫疾患
-シェーグレン症候群
-全身性エリテマトーデス(SLE)
-関節リウマチ - 免疫不全状態
-HIV感染(特に小児)
-原発性免疫不全症(共通変異型免疫不全症など) - 他の間質性肺炎の一部
-過敏性肺炎
-リンパ増殖性疾患の一環として
その他の関連因子
- EBウイルスなどのウイルス感染
- 骨髄移植後や自己免疫性肝炎などの背景疾患
- 薬剤性(極めてまれ)
LIPは、特にシェーグレン症候群の合併症として高頻度に認められます。そのため、LIPが疑われた場合には、膠原病のスクリーニングが不可欠です。
また、LIPは良性のリンパ球浸潤による疾患と考えられていますが、まれに悪性化(リンパ腫化)を起こす可能性があり、経過観察中に病勢の急激な変化が見られた場合には、病理組織学的検査を行う必要があります。
症状は?
LIPの症状は比較的非特異的で、他の間質性肺疾患と類似しています。緩やかな進行で、症状が出現するまでに時間がかかることが多いです。
主な症状
- 労作時の息切れ(階段や坂道で苦しい)
- 慢性的な乾いた咳(痰を伴わない)
- 倦怠感、疲れやすさ
- 体重減少
- 寝汗や微熱
進行例でみられる症状
- 安静時の呼吸困難
- チアノーゼ(口唇や爪の色が青紫)
- ばち指(指先が丸く太くなる)
- 低酸素血症(血中酸素飽和度の低下)
- 胸部圧迫感
呼吸音の変化
- 吸気終末にfine crackles(捻髪音)が聴かれることがある
- 気道閉塞を伴う場合はcoarse crackles(粗い捻髪音)やwheezing(喘鳴)が聴かれることがある
全身症状
- 発熱や寝汗、食欲低下などが伴うこともある
- シェーグレン症候群の合併例では、ドライアイや口腔乾燥などの症状が前面に出ることがある
小児例での特徴
- HIV感染児における発症が多く、成長障害や呼吸困難が主な訴え
- 発育の遅れや繰り返す呼吸器感染を合併することがある
病態の進行
- 肺の線維化が進行することでガス交換障害が悪化
- 肺機能の低下とともに日常生活動作(ADL)の制限が増加する
LIPは症状が非特異的で進行も緩やかなため、初期では他の呼吸器疾患と見分けがつきにくく、画像検査や病理診断が必要です。
診断方法と治療方法
診断
- 問診と身体診察
・症状の持続期間、進行の様子、家族歴、喫煙歴、自己免疫疾患の有無などを確認
・ばち指の有無や呼吸音の変化を確認 - 胸部X線検査
・びまん性の線状影や網状影が両側性に認められる
・初期では異常が軽微なこともある - 高分解能CT(HRCT)
・小葉中心性結節、すりガラス影、網状影が特徴的
・両肺に分布するびまん性病変を確認
・蜂巣肺(honeycombing)はLIPではまれだが、併発例では出現することも - 呼吸機能検査
・拘束性障害(肺活量の低下)と拡散能(DLCO)の低下
・病勢の評価と治療効果の判定に使用 - 血液検査
・KL-6、SP-D、SP-Aの上昇
・自己抗体(抗SSA抗体、抗核抗体など):膠原病の評価
・LDHやCRPなどの炎症マーカーの上昇 - 気管支鏡検査
・BAL(気管支肺胞洗浄液)でリンパ球増多を確認
・感染症の除外や鑑別診断に有用 - 組織診断
・経気管支肺生検や外科的肺生検により確定診断
・リンパ球や形質細胞の浸潤、リンパ濾胞形成などを確認
治療
- ステロイド療法
・プレドニゾロンを中心に使用。症状や画像所見に応じて投与量を調整
・副作用に注意しながら漸減して維持療法を行う - 免疫抑制薬の併用
・ステロイド単独で不十分な場合、アザチオプリンやシクロホスファミドを併用
・自己免疫疾患合併例では効果が高いことがある - 呼吸リハビリテーション
・運動耐性の改善とQOLの向上を目的に実施
・在宅酸素療法との併用も検討される - 感染予防と支持療法
・インフルエンザ、肺炎球菌ワクチンの接種
・必要に応じて抗菌薬、抗真菌薬の使用
治療反応は個人差が大きく、定期的な評価と治療方針の見直しが必要です。
予後
リンパ球性間質性肺炎は、間質性肺疾患のなかでは比較的緩やかに進行する病型であり、予後は良好なケースもありますが、再発や悪性化の可能性もあり、慎重な経過観察が求められます。
良好な予後の要因
- 早期診断とステロイド治療への良好な反応
- 自己免疫疾患のコントロールが良好
- 急性増悪が少なく、徐々に症状が安定している
予後不良の要因
- 免疫抑制状態の持続(HIV感染、自己免疫疾患の活動性)
- 病理組織で明らかな線維化所見がある場合
- 蜂巣肺や蜂巣状陰影の出現
- 呼吸機能の持続的低下(特にDLCOの著明な低下)
悪性化の可能性
- まれに悪性リンパ腫(特にMALTリンパ腫)への進展が報告されている
- 急激な症状の悪化があった場合には精査が必要
長期管理には、呼吸器専門医のフォローと自己免疫疾患の併診が必要です。
予防
LIPの発症予防は難しいものの、進行や急性増悪の予防、生活の質の維持には以下のような対策が重要です。
感染予防
- インフルエンザや肺炎球菌ワクチンの接種
- 風邪や気道感染の早期対応
- 手洗い、マスク、うがいなどの基本的な感染対策
喫煙の完全中止
- 喫煙は病勢進行や感染リスクを高める
- 受動喫煙も避けるよう周囲の理解が必要
定期的な受診と検査
- 呼吸機能検査、HRCT、血液検査などの定期フォロー
- 症状の変化や新たな合併症に注意する
生活習慣の整備
- 適度な運動と呼吸リハビリテーション
- バランスの取れた食事、睡眠とストレス管理
自己免疫疾患の管理
- 膠原病が併存している場合には、その活動性を抑えることがLIPの予防にもつながる
早期から包括的に生活指導と医療支援を行うことが、長期的な安定と予後改善につながります。
関連する病気や合併症
LIPは多くの疾患と関連することが知られており、以下のような疾患との合併や鑑別が重要です。
関連疾患
- シェーグレン症候群:最も関連が深く、LIPの主な基礎疾患
- 全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、皮膚筋炎などの自己免疫疾患
- HIV感染:特に小児でLIPの主要原因
- 共通変異型免疫不全症(CVID):成人例でも報告あり
合併症
- 悪性リンパ腫(特にMALTリンパ腫):まれだが重要な進展例
- 肺感染症:免疫抑制状態に伴い発生しやすい
- 呼吸不全:進行例では酸素療法が必要になる
- 骨粗鬆症や糖尿病:ステロイド治療による副作用
鑑別すべき疾患
- NSIP、IPF、AIPなどの特発性間質性肺炎群
- 過敏性肺炎、薬剤性肺障害
- 悪性リンパ腫、肺癌(特に結節性陰影を伴う場合)
多職種による継続的管理と、原因疾患への対応が長期的な予後を左右します。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
- MSDマニュアル プロフェッショナル版「リンパ球性間質性肺炎」(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional)
- 国立国際医療研究センター「間質性肺炎について」(https://www.ncgm.go.jp/)
■ この記事を監修した医師

石井 誠剛医師 イシイ内科クリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒後、済生会茨木病院で研修を行い、日本生命病院で救急診療科、総合内科勤務。
その後、近畿中央呼吸器センターで勤務後、西宮市立中央病院呼吸器内科で副医長として勤務。
イシイ内科クリニックを開設し、地域に密着し、 患者様の気持ちに寄り添った医療を提供。
日本生命病院では総合内科医として様々な内科診療に携わり、近畿中央呼吸器センターでは呼吸器の専門的な治療に従事し、 西宮市立中央病院では呼吸器内科副医長として、地域医療に貢献。
抗加齢学会専門医として、アンチエイジングだけを推し進めるのではなく、適切な生活指導と内科的治療でウェルエイジングを提供していくことを目指している。
- 公開日:2025/07/08
- 更新日:2025/07/16
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