フォン・ヴィレブランド病ふぉん・ゔぃれぶらんどびょう

フォン・ヴィレブランド病は、血液の止血に関わるフォン・ヴィレブランド因子が不足または異常をきたすことで、出血が止まりにくくなる遺伝性の出血性疾患です。症状は軽度から重度まであり、鼻血や月経過多が代表的です。治療には止血薬や因子補充が用いられます。

フォン・ヴィレブランド病とは?

フォン・ヴィレブランド病(von Willebrand disease)は、血小板の機能と血液凝固に必要な第VIII因子の安定化に関与する「フォン・ヴィレブランド因子(vWF)」が先天的に不足または異常をきたすことにより、血液の止まりにくさを特徴とする出血性疾患です。

最も一般的な遺伝性出血性疾患とされ、日本を含む世界中でみられます。遺伝形式は常染色体優性または劣性であり、性別に関係なく発症します。症状の重さは患者によって大きく異なり、無症状で経過する軽症例から、日常生活に支障をきたすほどの出血を伴う重症例までさまざまです。

フォン・ヴィレブランド因子は、血小板が損傷した血管壁に接着するための「のり」のような役割を果たし、また第VIII因子を安定化させる働きもあるため、止血機構の複数のステップに関与しています。

原因

フォン・ヴィレブランド病は、フォン・ヴィレブランド因子(vWF)の量的欠乏または質的異常が原因で起こります。この因子は血管内皮細胞や血小板に存在し、血小板の粘着と凝固因子の安定に重要な働きをします。

主な原因

  • 遺伝子変異:vWF遺伝子の変異により、因子の量や機能に異常が生じる
  • 遺伝形式:常染色体優性遺伝が多く、性別に関係なく発症する

フォン・ヴィレブランド病の分類

  • 1型(最も多い):vWFの量が少ない(軽度~中等度)
  • 2型:vWFの機能異常(4つのサブタイプが存在)
  • 3型:vWFがほとんど存在しない(重症)

また、非常にまれですが、後天性にvWFに対する自己抗体が生じる「後天性フォン・ヴィレブランド症候群」も存在します。これはがんや自己免疫疾患に合併することがあります。

症状

フォン・ヴィレブランド病の症状は、血小板の粘着障害と第VIII因子の低下により生じる止血異常に起因します。症状の程度は患者ごとに異なり、軽度では自覚症状がない場合もあります。

代表的な症状

  • 鼻血(繰り返しやすく、止まりにくい)
  • 歯ぐきからの出血
  • 皮膚のあざ(紫斑)
  • 月経過多(長くて量の多い生理)
  • 出血の止まりにくさ(けが、抜歯、手術などのあと)
  • 消化管出血(まれだが中等度以上ではみられる)
  • 関節内出血や筋肉内出血(3型などの重症例)

月経過多は特に女性患者のQOL(生活の質)に影響を与えるため、婦人科との連携が必要になることがあります。また、出血症状が軽く、他の出血性疾患と見分けがつきにくい場合もあるため、詳しい検査が求められます。

診断方法と治療方法

診断

診断には、血液検査を中心に複数の検査が行われ、vWFの量や機能、関連する凝固因子の活性を調べます。

  • 血小板数:通常は正常
  • 出血時間または閉鎖時間:延長していることが多い
  • vWF抗原量(vWF\:Ag):因子の量を評価
  • vWF活性(リストセチンコファクター活性など):機能を評価
  • 第VIII因子活性:vWFの機能低下により低下していることがある
  • 遺伝子検査:分類や家族診断に用いられる

治療

  • 1型および軽症例:デスモプレシン(DDAVP)で一時的にvWFと第VIII因子を増加させる
  • 2型・3型:vWFを含む血漿由来または組換え凝固因子製剤の補充
  • 止血補助薬:トラネキサム酸などの抗線溶薬
  • 女性の月経過多にはホルモン療法やIUS(子宮内装着型器具)などの併用

治療は症状の重さや手術、外傷の有無などに応じて調整されます。

予後

フォン・ヴィレブランド病の予後は、適切な管理と治療を行えばおおむね良好です。多くの患者は通常の生活を送ることができ、重篤な出血を回避することが可能です。

予後が良好なケース

  • 軽度~中等度の1型または2型の場合
  • 出血のリスクがある場面(手術・歯科治療など)であらかじめ対策が取れる場合
  • 定期診察で病状の変化を早期に把握できている

注意が必要なケース

  • 3型(重症)では関節出血や消化管出血など重篤な合併症が起こりやすい
  • 治療に使用されるvWF製剤への抗体出現(まれ)
  • 後天性フォン・ヴィレブランド症候群では基礎疾患の管理も必要

QOL維持のためには、患者自身のセルフモニタリングと医療者との連携が不可欠です。

予防

フォン・ヴィレブランド病は先天性の遺伝性疾患であるため、発症自体を予防することはできません。しかし、出血症状を予防したり、重症化を防ぐことは可能です。

予防的対策

  • 出血リスクの高い場面(手術、抜歯、出産など)では事前に治療計画を立てる
  • 月経過多に対しては早期から婦人科治療を併用する
  • 抗血小板薬やNSAIDs(アスピリンなど)の使用には慎重になる
  • 外傷を防ぐ生活習慣(運動の工夫、安全対策)を心がける
  • 症状のある家族がいる場合には、早期診断を検討する

また、学校や職場など周囲の理解を得ることも、患者が安心して生活を送る上で大切です。

関連する病気や合併症

フォン・ヴィレブランド病は単独で存在することが多いですが、他の出血性疾患や全身性疾患と合併する場合や、治療に伴う副作用などにも注意が必要です。

関連疾患・鑑別が必要な疾患

  • 血友病A:第VIII因子活性の低下があるため誤診に注意
  • 再生不良性貧血や白血病:出血症状が共通する
  • 血小板機能異常症:血小板数は正常だが出血傾向を示す
  • 後天性フォン・ヴィレブランド症候群:リンパ腫、自己免疫疾患、心疾患などに合併することがある

合併症

  • 重度の月経過多による貧血
  • 関節出血による機能障害(3型でみられる)
  • 手術時の大量出血
  • 製剤使用によるアレルギー反応(まれ)

これらを防ぐには、日頃から自分の病状を理解し、早めに医療機関へ相談する姿勢が重要です。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

厚生労働省 e-ヘルスネット(https://kennet.mhlw.go.jp/home)

日本血栓止血学会(https://www.jsth.org/)

日本血友病学会(https://www.hemophilia.jp/)

国立国際医療研究センター(https://www.ncgm.go.jp/)

難病情報センター(https://www.nanbyou.or.jp/)

■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。

「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。 医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。

  • 公開日:2025/07/16
  • 更新日:2025/07/16

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