潰瘍性大腸炎かいようせいだいちょうえん
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に慢性的な炎症や潰瘍が生じる自己免疫性の病気で、主に下痢や血便、腹痛などの症状を繰り返します。原因は明確に解明されていませんが、自己免疫や腸内環境、遺伝的要因などが関与すると考えられています。治療には内科的管理が中心で、再発と寛解を繰り返す慢性疾患です。
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潰瘍性大腸炎とは?
潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)とは、大腸の粘膜に慢性的な炎症やびらん、潰瘍が生じる病気で、「炎症性腸疾患(IBD)」に分類されます。病変は直腸から始まり、連続的に上行して大腸全体に広がる特徴があります。
日本では難病指定されており、発症年齢は10〜40代の若年層に多いですが、全年齢で発症の可能性があります。病状は良くなったり悪くなったりを繰り返す「再燃寛解型」が一般的です。
症状の程度や範囲により、軽症から重症までさまざまで、生活の質(QOL)に大きく影響を及ぼす疾患ですが、近年では治療薬の進歩により、多くの患者が寛解状態を維持できるようになっています。
クローン病とは異なり、炎症は大腸のみに限局し、病変は連続的に分布するのが特徴です。
原因
潰瘍性大腸炎の正確な原因は未解明ですが、複数の因子が関与すると考えられています。
【自己免疫異常】
免疫系が本来自分の腸粘膜を攻撃してしまうことで、慢性的な炎症が起こるとされます。免疫細胞やサイトカインの異常活性化が関与しているとされます。
【遺伝的要因】
家族内での発症が見られることがあり、遺伝的素因が発症リスクに関与することが示唆されています。
【腸内環境の変化】
腸内細菌のバランスの乱れ(腸内フローラ異常)が、免疫系を刺激し発症につながる可能性があります。
【環境要因】
食生活の欧米化、抗生物質の使用、ストレス、喫煙歴、感染症などが影響すると考えられています。
これらの因子が複雑に絡み合い、腸管免疫系の異常を誘発し、粘膜の炎症が持続的に引き起こされると考えられますが、発症のメカニズムは今なお研究段階です。
症状
潰瘍性大腸炎の主な症状は、大腸粘膜の炎症による下痢や血便です。病変の範囲や重症度によって症状には個人差があります。
- 下痢:1日に数回〜10回以上の水様便
- 血便:粘血便や赤い血液が混じる便が見られる
- 腹痛:主に左下腹部や下腹部に痛みを感じやすい
- 腹部不快感や膨満感
- 発熱(中等症以上で)
- 便意切迫(すぐにトイレに行きたくなる)
- 残便感、排便後のすっきりしない感覚
- 倦怠感、体重減少、貧血(慢性的な出血による)
- まれに関節痛、皮膚炎、目の炎症などの全身症状(腸管外合併症)
発症は緩やかに始まることが多く、しばしば「痔出血」「過敏性腸症候群」と誤認されることもあります。
再燃期には症状が強く現れ、寛解期には症状が消失または軽度になるため、経過観察と治療継続が必要です。
診断方法と治療方法
診断
潰瘍性大腸炎は、以下のような検査を総合して診断されます。
- 大腸内視鏡検査:直腸から連続する炎症、びらん、潰瘍の有無を観察し、組織の一部を生検して診断
- 便検査:感染性腸炎との鑑別、便中カルプロテクチンで炎症の評価
- 血液検査:貧血、炎症マーカー(CRP)、アルブミン、白血球数などの全身状態確認
- 腹部X線、CT、MRI:重症例や合併症(腸管拡張、穿孔など)の評価
治療
- 5-ASA製剤(メサラジン、サラゾスルファピリジン):炎症の抑制(内服・注腸)
- ステロイド(プレドニゾロン):中等症以上で使用、寛解導入に有効だが長期使用には注意
- 免疫調整薬(アザチオプリン、6-MP):ステロイド依存例や再発予防に使用
- 生物学的製剤(インフリキシマブ、アダリムマブなど):重症例や難治性例に適応
- JAK阻害薬、カルシニューリン阻害薬など:新規治療薬として導入されつつある
【外科的治療】
薬物治療が無効な重症例、がん化リスクが高い場合には大腸全摘出術が検討されます。
予後
潰瘍性大腸炎は慢性疾患であり、再燃と寛解を繰り返しながら一生付き合っていく必要がある病気です。適切な治療と自己管理により、長期的に安定した状態(寛解)を保つことが可能です。
軽症〜中等症の患者では、5-ASA製剤などの内服薬のみで寛解を維持できる場合も多く、日常生活や就労・就学も問題なく行えることが多いです。
ただし、重症化した場合や治療が不十分な場合には、腸管穿孔や大量出血、中毒性巨大結腸症などの重篤な合併症を引き起こすリスクがあり、入院や手術が必要になることもあります。
また、発症から年数が経過すると大腸がんのリスクが高まるため、定期的な内視鏡検査によるがんスクリーニングが重要です。
治療の継続、再燃の予兆を見逃さない観察力、医療者との密な連携が予後の良否を左右します。
予防
潰瘍性大腸炎は自己免疫の異常に基づく病気であり、明確な予防法は確立されていませんが、再燃のリスクを抑えるためには以下のような生活習慣の工夫が重要です。
【生活管理】
- 規則正しい生活習慣(睡眠、食事、排便リズムの維持)
- 暴飲暴食、刺激物(アルコール、香辛料、脂質)の摂取を避ける
- 禁煙(喫煙者では再燃率が高いとの報告あり)
- 十分な水分と栄養を摂る(低残渣食が推奨される場合あり)
【ストレスマネジメント】
- 精神的ストレスを避ける
- 過労を控え、心身を休める
- 必要に応じてカウンセリングやリラクゼーションを取り入れる
【薬物継続と医療フォロー】
- 症状がないときでも治療薬の服用を中断しない
- 定期通院と内視鏡検査による状態把握
- 便潜血やカルプロテクチンによる炎症マーカーのモニタリング
日常の小さな工夫と定期的な医療管理が、再燃予防と長期安定の鍵です。
関連する病気や合併症
潰瘍性大腸炎に関連する合併症は、腸管内と腸管外に分けられます。
【腸管内合併症】
- 中毒性巨大結腸症:腸の極端な拡張と炎症による重篤な状態
- 穿孔:炎症が進行し腸壁に穴があく(腹膜炎の原因)
- 大量出血:潰瘍からの出血
- 狭窄:慢性炎症による腸管の狭窄
- 大腸がん:発症から8~10年以上でリスクが増加
【腸管外合併症】
- 関節炎(脊椎炎、末梢関節炎)
- 皮膚病変(結節性紅斑、壊疽性膿皮症)
- 眼の炎症(強膜炎、ぶどう膜炎)
- 肝胆道疾患(原発性硬化性胆管炎など)
- 血栓症(深部静脈血栓症など)
合併症の早期発見と対処のためには、腸症状だけでなく全身の体調変化にも注意が必要です。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
厚生労働省 難病情報センター「潰瘍性大腸炎」(https://www.nanbyou.or.jp/)
日本消化器病学会「潰瘍性大腸炎診療ガイドライン」(https://www.jsge.or.jp/)
国立国際医療研究センター「炎症性腸疾患センター」(https://www.ncgm.go.jp/)
日本炎症性腸疾患学会「IBD診療の手引き」(https://www.ibdjapan.org/)
■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。
「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。
医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。
医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。
- 公開日:2025/07/08
- 更新日:2025/07/08
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