胃酸過多症いさんかたしょう

胃酸過多症は、胃酸が過剰に分泌されることで胃や食道に刺激を与え、不快な症状を引き起こす病気です。胃もたれや胸やけ、空腹時の痛みなどが代表的な症状で、進行すると胃炎や潰瘍の原因にもなります。薬物療法と生活習慣の改善が治療の基本で、ストレスや食事内容の見直しも重要です。

胃酸過多症とは?

胃酸過多症とは、胃の中に分泌される胃酸(塩酸)が必要以上に多くなり、胃の粘膜や食道の粘膜を刺激し、不快な症状を引き起こす状態をいいます。胃酸は食物の消化に重要な役割を果たしていますが、過剰になると逆に粘膜を傷つけ、炎症や潰瘍を招く原因になります。

胃酸過多自体は疾患名ではなく、消化性潰瘍や逆流性食道炎、急性胃炎などの背景として存在する病態です。特に若年から中年に多く見られ、ストレスや生活習慣、食事内容の影響を受けやすいとされています。

胃酸過多は一時的な状態のこともありますが、慢性的に続くと消化器症状を悪化させ、消化管の病気を引き起こすリスクが高まります。そのため、症状がある場合には早期の対応と生活の見直しが大切です。

原因

胃酸が過剰に分泌される原因には、いくつかの要素が関係しています。

まず多いのが「ストレス」で、精神的・身体的な緊張状態が交感神経を刺激し、胃酸の分泌を促進することがあります。

次に「食生活の乱れ」です。脂っこい食事、香辛料、炭酸飲料、アルコール、カフェインなどは胃酸の分泌を高めるため、これらの摂取が過剰だと胃酸過多の要因となります。

「喫煙」も胃粘膜の防御機能を低下させ、胃酸の影響を受けやすくします。また、「空腹時間が長い」「早食い」などの習慣も胃酸の分泌を刺激しやすいとされています。

「ピロリ菌感染」がある場合は、胃粘膜の炎症により胃酸の調整が乱れ、一時的に分泌過剰となることがあります。その他、薬剤(NSAIDs、ステロイドなど)の影響も無視できません。まれに「ガストリノーマ」という腫瘍によって胃酸が異常に分泌されることもあります。

症状

胃酸過多症によって起こる症状は、胃や食道の粘膜が胃酸により刺激されることで生じます。

最もよくみられるのは「胃もたれ」「みぞおちの痛み」「胸やけ」です。特に空腹時や夜間に強く感じることがあり、食後に一時的に改善することもあります。

また、「げっぷ」「吐き気」「早期飽満感(すぐに満腹になる)」「口の中が酸っぱい」「胃の中が熱く感じる」といった症状もよく見られます。

胃酸が食道へ逆流することで、「喉の違和感」「声のかすれ」「慢性的な咳」が出ることもあり、これは逆流性食道炎と症状が重なる場合です。

放置すると、胃粘膜が傷つき「急性胃炎」「胃潰瘍」「十二指腸潰瘍」などへ進行することがあります。とくに痛みや出血を伴う場合は、貧血や黒色便、吐血を招くこともあるため、注意が必要です。

診断方法と治療方法

診断

診断には、まず症状の聞き取りと生活習慣の確認が行われます。そのうえで、消化性潰瘍や胃炎、逆流性食道炎などの疾患を除外するため、「上部消化管内視鏡(胃カメラ)」が行われます。

内視鏡では、胃や食道の粘膜に炎症、びらん、潰瘍がないかを観察し、必要に応じて組織の一部を採取して病理検査が行われます。

血液検査やピロリ菌検査(尿素呼気試験、便中抗原検査、血清抗体検査など)も補助的に行われることがあります。

治療

治療の中心は「胃酸を抑える薬」と「生活習慣の改善」です。

  • プロトンポンプ阻害薬(PPI)
  • カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)
  • H2ブロッカー
  • 制酸剤

必要に応じて、胃粘膜保護薬や消化管運動改善薬、漢方薬などが併用されます。生活習慣では、刺激物の制限、禁煙、禁酒、規則正しい食事と睡眠の確保が重要です。

予後

胃酸過多症そのものは命に関わる病気ではありませんが、放置していると「胃炎」「胃潰瘍」「十二指腸潰瘍」「逆流性食道炎」などの合併症につながるおそれがあります。

適切な薬物治療と生活習慣の見直しにより、多くの場合は数週間から数ヶ月で症状が改善します。特にPPIやP-CABといった薬剤は高い治療効果を示し、再発も予防できます。

ただし、薬を中断すると症状が再発するケースもあり、症状の安定後も医師の指導のもとで段階的に薬を減量・中止する必要があります。

ストレスや食生活の乱れが再発の原因となるため、予後を良好に保つには定期的な診察と生活習慣の維持が欠かせません。

ピロリ菌感染が認められた場合は、除菌治療によって胃粘膜の炎症を改善し、再発を予防することもできます。

予防

胃酸過多を予防するには、胃酸の分泌を過剰に刺激しない生活習慣を心がけることが基本です。

まず、刺激物(アルコール、カフェイン、香辛料、炭酸飲料、酸味の強いものなど)の過剰摂取を避け、規則正しい食事と腹八分目を意識することが大切です。

禁煙や禁酒も胃粘膜の保護に効果があり、特に喫煙は胃酸分泌を促進し、粘膜の血流も悪化させるため、胃酸過多の大きな要因となります。

ストレスや過労、睡眠不足は自律神経を乱し、胃酸の過剰分泌につながるため、十分な休養とストレスコントロールも予防の一環です。

食後すぐに横になることや過度の早食い、長時間の空腹も避け、消化にやさしい食事を心がけましょう。ピロリ菌感染がある場合には、除菌治療を受けることも予防的に有効です。

関連する病気や合併症

胃酸過多が関係する主な疾患には次のようなものがあります。

  • 急性胃炎:胃酸によって粘膜が直接刺激されて炎症が起こる
  • 胃潰瘍、十二指腸潰瘍:胃酸の攻撃に粘膜防御が追いつかず、粘膜がえぐれる
  • 逆流性食道炎:胃酸が食道に逆流し、炎症や胸やけを引き起こす
  • 食道狭窄:逆流性食道炎の繰り返しにより、食道が狭くなる
  • 胃がん:長期にわたる炎症やピロリ菌感染の影響により、がんのリスクが高まる
  • 機能性ディスペプシア:胃の運動や知覚の異常によって症状が慢性化する状態

また、出血を伴う潰瘍では黒色便や貧血を引き起こし、穿孔を起こすと腹膜炎になることもあります。胃酸過多は一見軽度な症状に見えても、進行すれば重篤な疾患に発展することがあるため、早期の対処が重要です。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

日本消化器病学会「胃炎・潰瘍と胃酸分泌」(https://www.jsge.or.jp/)

国立国際医療研究センター「胃酸過多の症状と対策」(https://www.ncgm.go.jp/)

日本ヘリコバクター学会「胃酸分泌とピロリ菌感染」(https://www.jshr.jp/)

■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。

「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。 医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。

  • 公開日:2025/07/08
  • 更新日:2025/07/09

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