肛門掻痒症こうもんそうようしょう

肛門掻痒症は、肛門周囲に強いかゆみが起こる皮膚の疾患で、排便後や夜間に悪化することがあります。刺激や不衛生な環境、アレルギー、感染などが原因となり、慢性化すると皮膚がただれたり肥厚することもあります。原因の特定と適切なスキンケア、薬物治療が重要です。

肛門掻痒症とは?

肛門掻痒症とは、肛門周囲に強いかゆみを感じる皮膚疾患の一つです。「こうもんそうようしょう」と読み、単なる一時的な不快感ではなく、皮膚に炎症や湿疹を伴うこともある慢性のかゆみが続く状態を指します。

かゆみは日中よりも夜間に強くなり、睡眠の妨げになることもあります。掻きむしることで皮膚が傷つき、さらに炎症が悪化するという悪循環に陥るケースも少なくありません。

この疾患は、直接的な原因が特定できる「続発性」と、明らかな原因がなく発症する「特発性」に分類されます。生活習慣や皮膚の状態、基礎疾患の有無を丁寧に調べたうえで治療することが必要です。

原因

肛門掻痒症の原因はさまざまで、多くは皮膚への刺激や衛生状態の乱れに起因しています。以下に主な原因を紹介します。

皮膚への刺激

  • 排便後の拭きすぎ、トイレットペーパーの摩擦
  • 香料入りやアルコールを含むウェットティッシュの使用
  • 石けんやボディソープによる洗浄のしすぎ

不衛生な環境

  • 下着の蒸れや汚れ、排便後のふき取り不十分
  • 残便感や分泌物による肛門の湿潤状態

皮膚疾患・アレルギー

  • アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎
  • 痔核や裂肛などの肛門疾患に伴う皮膚刺激
  • カンジダ、白癬、毛じらみなどの感染症

基礎疾患・全身状態

  • 糖尿病、肝疾患、腎不全、悪性腫瘍などの慢性疾患
  • ストレスや自律神経失調症による皮膚感覚過敏

原因が複合的に存在することもあり、的確な診断が治療の鍵となります。

症状

肛門掻痒症の主な症状は「かゆみ」ですが、その程度やタイミング、伴う皮膚変化によって病状が進行しているかどうかがわかります。

  • 肛門周囲のかゆみ:軽い違和感から耐え難いかゆみまでさまざま
  • 夜間のかゆみ:入浴後や就寝時に強くなる傾向
  • 排便後のかゆみ:ふき取り刺激や便の残留による
  • 皮膚の湿潤:常に湿っているような感覚がある
  • 皮膚の乾燥やカサカサ感:慢性化した皮膚炎では乾燥や落屑がみられる
  • 掻きむしりによる出血:皮膚が薄くなり、引っかき傷ができやすい
  • 皮膚の肥厚・色素沈着:長期間の炎症により皮膚が硬く黒ずむことがある
  • 下着の汚れ:膿や分泌物によって汚れることがある

かゆみが続くと生活の質が低下し、集中力の低下や睡眠障害を引き起こすこともあります。

診断方法と治療方法

診断

  • 問診:かゆみの程度、時間帯、生活習慣、排便状況、使用している日用品などを確認
  • 視診:皮膚の赤み、ただれ、湿潤、色素沈着、肥厚などを評価
  • 真菌検査:白癬菌やカンジダの感染を調べるため、皮膚の一部を採取して顕微鏡検査
  • パッチテスト:アレルギー性皮膚炎が疑われる場合に実施
  • 血液検査:糖尿病や肝疾患など全身性の原因が疑われる場合に行う

治療

  • 原因除去:石けんやアルコールなど刺激物の使用を中止し、温水洗浄のみに切り替える
  • 外用薬の使用:
     - 軽症:抗ヒスタミン外用薬や保湿剤
     - 中等症〜重症:ステロイド外用薬、亜鉛華軟膏
     - 感染症がある場合:抗真菌薬や抗生物質入り軟膏
  • 内服治療:抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬によるかゆみの抑制
  • 生活指導:排便習慣の改善、下着の通気性、ストレス管理

原因に応じて皮膚科や肛門外科での診療連携が必要になる場合もあります。

予後

肛門掻痒症の予後は、原因の特定と適切な対処ができるかどうかで大きく異なります。多くのケースで生活習慣の改善と薬物療法により症状は軽快しますが、慢性化すると再発や皮膚変化が残ることもあります。

良好な予後が期待できるケース

  • 一時的な刺激や不衛生が原因で、生活指導と軟膏治療により数日〜数週間で改善
  • 外用薬や内服薬がよく効き、かゆみが消失する

慢性化・再発しやすいケース

  • 原因が複数重なっている場合(皮膚炎+糖尿病など)
  • 掻きむしりによって皮膚が硬くなったり黒ずんだ場合
  • アレルギー体質やアトピー性皮膚炎が基礎にある場合
  • ストレスや不安が強い場合(神経因性掻痒)

根気よく治療を続けることが重要であり、再発防止には日常のスキンケアと体調管理が欠かせません。

予防

肛門掻痒症の予防には、肛門を清潔かつ適度に保ち、刺激を避けることが基本です。以下のような習慣が効果的です。

スキンケアと清潔保持

  • 排便後はウォシュレットなどで優しく洗い、やわらかい紙で軽く拭き取る
  • 石けんを使用する場合は刺激の少ない低刺激性のものを選ぶ
  • 洗浄後は保湿剤を塗って乾燥を防ぐ
  • 入浴後は肛門周囲をしっかり乾かす

生活習慣の見直し

  • 下痢や便秘を予防し、排便習慣を整える
  • 綿素材など通気性のよい下着を選ぶ
  • 香料やアルコールを含むトイレットペーパー、ウェットティッシュは避ける
  • ストレス管理、十分な睡眠をとる
  • 長時間の座位を避け、時々立って体を動かす

早期に予防対策を取り入れることで、発症や再発のリスクを大きく下げることが可能です。

関連する病気や合併症

肛門掻痒症は単独でも生じますが、以下のような疾患との関連や合併が見られることがあります。

関連疾患

  • アトピー性皮膚炎:皮膚のバリア機能が低下しており、慢性化しやすい
  • 接触皮膚炎:洗浄剤や下着の素材に反応して発症
  • 痔核、裂肛、痔瘻:肛門部の分泌物や炎症が原因となる
  • 白癬、カンジダ:真菌感染による慢性的な皮膚炎
  • 糖尿病:皮膚の抵抗力が低下し、感染やかゆみが悪化しやすい
  • 肝疾患・腎疾患:全身性の皮膚かゆみを引き起こすことがある

合併症

  • 皮膚の肥厚や色素沈着:慢性的な掻破による皮膚の変化
  • 二次感染:かき壊した部位から細菌感染が起きる
  • 生活の質の低下:かゆみによる睡眠障害や精神的ストレス

これらを見逃さず、適切なタイミングでの専門的対応が求められます。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

日本皮膚科学会「肛門掻痒症の診断と治療」(https://www.dermatol.or.jp/)

厚生労働省e-ヘルスネット「肛門掻痒症」(https://kennet.mhlw.go.jp/home)

国立国際医療研究センター「肛門疾患と皮膚のかゆみ」(https://www.ncgm.go.jp/)

日本臨床肛門病学会「肛門掻痒症とは」(https://jacp-doctor.jp/society/)

■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。

「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。 医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。

  • 公開日:2025/07/16
  • 更新日:2025/07/16

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