ニューモシスチス肺炎にゅーもしすちすはいえん
ニューモシスチス肺炎(PCP)は、ニューモシスチス・イロベチイというカビが原因で起こる肺炎です。免疫力が低下した人に多く、発熱・息切れ・乾いた咳が代表的な症状です。放置すると重い呼吸不全につながることがあるため、早期診断とST合剤による治療、予防内服が重要です。
目次
⚫︎ニューモシスチス肺炎とは?
ニューモシスチス肺炎は、「ニューモシスチス・イロベチイ(Pneumocystis jirovecii)」という真菌(カビ)によって起こる肺炎です。かつては原虫と考えられていましたが、現在はカビの仲間として扱われています。
この病気は、免疫力が大きく低下したときに発症する「日和見感染症(ひよりみかんせんしょう)」の一つです。日和見感染症とは、ふだんの免疫で抑え込める病原体が、体の防御力が弱ったときに初めて問題になる感染症のことです。
特に、HIV感染症でCD4陽性リンパ球が減っている方、がんや膠原病でステロイド・免疫抑制薬を使っている方、臓器移植後の方などで発症しやすいとされています。
⚫︎ニューモシスチス肺炎の原因
原因となる微生物
ニューモシスチス肺炎の原因は、ニューモシスチス・イロベチイというカビです。人の肺の中に潜んでいることもあり、免疫力が保たれているうちは症状を出しませんが、免疫が弱ると増殖して肺炎を起こします。
発症の背景となる状態
次のような状態では、ニューモシスチス肺炎のリスクが高くなります。
- HIV感染症/AIDS(特にCD4陽性リンパ球が200/μL未満)
- 白血病・悪性リンパ腫などの血液がん
- 固形がんの化学療法中
- 臓器移植・造血幹細胞移植後で免疫抑制薬を使用している
⚫︎ニューモシスチス肺炎の症状は?
典型的には、数日から数週間かけて少しずつ症状が強くなっていきます。
- 発熱(微熱〜高熱)
- 乾いた咳(痰があまり出ない咳)
- 動いたときの息切れ、階段や坂での苦しさ
- 胸の圧迫感・不快感
- 全身のだるさ、食欲低下
HIV感染症の方では、ゆっくりと進行し、「なんとなく息が上がりやすい」「軽い発熱が続く」といったかたちで始まることがあります。一方、HIVではない免疫抑制状態(ステロイド大量使用など)の方では、急に重い呼吸困難になることもあります。
肺から全身に広がった場合、次のような症状が出ることもあります。
- 皮膚の発疹やしこり、潰瘍
- 骨の痛み
⚫︎受診の目安
次のような症状がある場合は、早めに医療機関への受診を検討してください。
- 免疫を抑える薬を飲んでいる
- HIV感染症があるなどの背景があり
- 1〜2週間以上続く発熱や乾いた咳がある
- 階段や少しの歩行で息切れが強くなってきた
とくに
- 会話が続けにくいほど息苦しい
- 横になっていても苦しい
- 唇や顔が青っぽい(チアノーゼ)
といった場合は救急受診が必要です。
⚫︎診断方法と治療方法(全体像)
ニューモシスチス肺炎の診断は
診断は
- 症状や基礎疾患(HIV、がん、膠原病など)の確認
- 胸部レントゲン・CTなどの画像検査
- 血液検査(炎症や酸素の状態、β-Dグルカンなど)
- 痰や気管支洗浄液を用いた微生物検査(染色・PCRなど)
を組み合わせて行います。
治療の中心は、ST合剤(スルファメトキサゾール・トリメトプリム:一般に「ST合剤」と呼ばれる薬)の内服または点滴です。呼吸状態が悪い場合や重症例では、酸素投与やステロイド薬の併用、集中治療室での管理が必要となることもあります。
⚫︎ニューモシスチス肺炎の診断
1)問診・診察
- いつから発熱・咳・息切れが出ているか
- HIV感染症の有無、CD4陽性リンパ球数
- がん・膠原病などの基礎疾患
- ステロイドや免疫抑制薬の使用状況(用量・期間)
2)画像検査
- 胸部X線写真では、両側の肺に淡い影が広がることがあります。
- 胸部CTでは、「すりガラス影」と呼ばれる白っぽい影が両側に広がるのが典型的です。他の肺炎や間質性肺炎との見分けに役立ちます。
3)血液検査
- 炎症反応、肝腎機能、電解質などを確認します。
- 血中β-Dグルカン(真菌由来の成分)が上昇していることが多く、補助診断として用いられます。
- 血液ガス分析で酸素不足の程度を評価し、重症度判定に使います。
⚫︎ニューモシスチス肺炎の治療
A. 基本となる薬物治療
第一選択はST合剤(スルファメトキサゾール・トリメトプリム)
- 中等症〜重症では点滴、軽症では内服で治療します
- 治療期間は通常21日程度とされることが多いですが、患者さんの状態によって調整されます
ST合剤が使えない場合(アレルギーや重い副作用など)
アトバコン、ペンタミジン、クリンダマイシン+プリマキンなど他の薬剤を用いることがあります。
B. ステロイドの併用
重症例(血液ガスで酸素がかなり低い場合)では、ステロイド薬を補助的に使用すると、炎症による肺のダメージを抑え、予後を改善するとされています。
C. 呼吸管理
酸素投与が必要になることが多く、重症例では人工呼吸器による管理や集中治療室での治療が必要となることもあります。
⚫︎ニューモシスチス肺炎の予後
ニューモシスチス肺炎は、適切な治療を早期に開始できれば回復が期待できる病気ですが、診断や治療が遅れると、致死率が高くなることが知られています。
HIV感染症の方では、比較的ゆっくり進行するものの、放置すると重い呼吸不全に陥ることがあります。
HIV以外の免疫抑制状態(がん・膠原病・移植後など)の方では、急速に悪化しやすく、短期間で重症化することがあります。
予後は
- 基礎疾患の種類と重さ
- 免疫状態(CD4数など)
によって大きく左右されます。治療後も、しばらくは息切れや体力低下が残ることがありますが、リハビリや基礎疾患のコントロールにより、少しずつ改善していくことが多いです。
⚫︎ニューモシスチス肺炎の予防
完全に防ぐことは難しいですが、高リスクの方には「予防内服」が推奨されることがあります。
薬による予防
- HIV感染症でCD4陽性リンパ球が200/μL未満の方などには、ST合剤を少量で定期的に内服して予防する方法が広く用いられています
- 膠原病や腎疾患などで中〜高用量のステロイド・免疫抑制薬を使う方でも、医師の判断で低用量のST合剤予防が行われることがあります
生活面での工夫
- 自己判断でステロイドや免疫抑制薬を増減しない
- 感染症が疑われる症状(発熱・咳・息切れなど)が出たときには、早めに主治医に相談する
- HIV感染症の方は、抗HIV療法(ART)をきちんと継続し、免疫状態を改善・維持することが重要
⚫︎ニューモシスチス肺炎に関連する病気や合併症
ニューモシスチス肺炎に関連して、次のような病気や合併症がみられることがあります。
呼吸不全
肺全体に炎症が広がることで、酸素が取り込みにくくなり、酸素投与や人工呼吸器が必要となることがあります。
気胸(ききょう)
まれに、肺が破れて胸の中に空気が漏れる「気胸」を合併することがあります。急な胸の痛みや片側だけの強い息苦しさが出た場合には注意が必要です。
他の日和見感染症
ニューモシスチス肺炎を起こすような免疫低下状態では、カンジダ症、サイトメガロウイルス感染症、クリプトコックス症など、他の感染症も合併しやすくなります。
基礎疾患の増悪
がんや膠原病、HIV感染症そのものの進行が、全身状態や予後に影響することもあります。
⚫︎まとめ
ニューモシスチス肺炎は、宿主の細胞性免疫が低下した際に発症する、真菌(ニューモシスチス・イロベチイ)を原因とする日和見感染症です。
臨床症状として、発熱、乾性咳嗽、進行性の呼吸困難を呈し、重症例では急速に呼吸不全へと至るリスクがあります。
診断には胸部CT等の画像検査、血清β-Dグルカン値、喀痰検査が用いられます。治療の第一選択はST合剤ですが、重症度に応じてステロイドや酸素療法が併用されます。高リスク群における予防内服の徹底と、基礎疾患の適切な管理、そして初発症状を見逃さない早期の医療アクセスが肝要です。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
- Ubie 病気のQ&A「ニューモシスチス肺炎(PCP)の原因は何がありますか?」
(https://ubie.app/byoki_qa/clinical-questions/hf_7cuwix) - 国立成育医療研究センター 日和見疾患の診断・治療ハンドブック「ニューモシスチス肺炎(PCP)」
(https://www.acc.jihs.go.jp/medics/treatment/handbook/part2/no27.html)
■ この記事を監修した医師
赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。
「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。
医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。
医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。
- 公開日:2026/03/10
- 更新日:2026/03/10
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